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足りないものは充電インフラ、日本のEV充電インフラの現状と課題 【第4回】京都で賃貸管理大手の長栄に聞く、関西でも進む賃貸物件へのEV充電器設置の実際と課題

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 第4回目では、京都府・滋賀県を中心に2・6万戸以上の賃貸物件を管理する長栄に、賃貸マンションにEV充電器を設置していくことの狙いや課題を聞いた。

―2023年5月ごろからEV充電器の導入提案を進めたということですが、その狙いや背景を教えてください。
 当社では賃貸不動産管理会社として、賃貸不動産オーナーより管理受託した物件の入居率と付加価値の向上、入居者の満足度向上を考え、日々の業務を行っています。その中で、昨今のEV需要の高まりにより、必然的に賃貸不動産に入居される方においてもEVユーザーが増え、賃貸不動産へのEV充電設備設置の需要が高まるものと考え導入検討を進めました。
 また、当社の創業の地でもある京都市では、京都議定書が採択された都市として先導的な役割を果たすため、産官民などがそれぞれの立場において、地球温暖化を防止するため「京都市地球温暖化対策条例」が制定されています。一般的に賃貸不動産では入居者自らEV充電設備を設置することはできないため、賃貸不動産管理会社がEV充電設備の設置を促進することがひいてはEVの普及につながると考えています。

―続々と賃貸マンションへの充電器の設置工事が進んでいるとのことですが、工事前や工事中に課題となったことはありますか。
 課題となったことは主に2点です。1点目は、当社の場合は既に建築した物件に設置するため、設置工事後もいかに物件の美観を維持するかという点です。賃貸不動産管理会社として、美観は非常に重要であるため、施工業者と設置場所、配線経路、復旧工事など密に打ち合せを行いました。
 2点目は、既存入居者へのEV充電設備導入に関する説明と協力です。現況EVユーザーではない入居者が多い中、どのような設備が設置されるか、敷地内の工事がどのように行われるかを丁寧に説明しました。

(あとがき)
新築建築物へのEV充電器の設置が義務化される東京都以外でも、集合住宅にEV充電インフラの整備が着実に進んでいることが分かる。賃貸物件ならではの課題もあるが、施工業者や入居者などの全ての関係者と丁寧に協力関係を築くことを大切にしたい。

※写真は、EV充電器の設置が完了している、長栄が管理する賃貸マンションのエリセオびわ湖(滋賀県大津市)。

執筆者プロフィール

Terra Motors且謦役会長 徳重 徹(とくしげ・とおる)

徳重 徹(とくしげ・とおる)
Terra Motors且謦役会長
1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを創業、インドの電動三輪市場においてトップシェアを獲得。22年に日本でEV充電インフラTerra Charge事業を立ち上げ。EVをもっと身近にすることを目指して、新たなインフラづくりに取り組み、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。