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若手記者が聴く〜社長、あなたはなぜ建設業を?D 金杉建設(埼玉県春日部市)吉川祐介代表取締役社長

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 技術者として「しっかりと技術を学び、磨き続ける」。進む道を後押しした言葉は、品確法の制定という大きな転換点で自身の指針となった。社会基盤を支える建設業として、磨いた技術を使い、常により良い仕事を求めていこうと考えている。
 埼玉県内で土木工事を手掛ける金杉建設の3代目社長。祖父と父の背中を見て育ち、建設業以外に将来の選択肢は考えられなかった。このため、大学では土木工学を専攻。研究にやりがいを感じて大学院も頭をよぎったが、推薦をもらっていたゼネコンに就職を決めた。
 しかし、研究の道を諦めきれず、学究肌の上司からの「技術者はしっかり勉強していく必要がある」という言葉に後押しされて、2年目の冬に退職。母校の大学院に戻った。
 修士課程を終えて、金杉建設に入社。その後の約20年間を、「品確法と歩んできたのかもしれない」と振り返る。積算や営業を担当していたが、2005年に同法が制定されてからは技術資料の作成を担当。当初は経験がない中、会社のデータを整理するなどして対応していた。その後、同法の核となった総合評価方式は、年を追うごとに拡大。「これからの建設業は、より良い仕事を追及し続ける必要がある」と考え、冒頭の信念を持つようになった。
 ICT施工を積極展開する理由も、その信念に根差している。きっかけは単純に国の加点措置だったが、その実用性を実感して「社内に技術を蓄積すべき」と、外注していた3次元データを内製化。今では展示会などで情報を集め、気になるものはどんどん導入している。最近導入した「チルトローテータ」について、重機のバケットを手首のように動かせる技術の可能性を楽し気に語る姿は、無邪気な研究者のようだ。
 近年では他社にも講習を行うなど、その分野では名が知られる存在に。ノウハウを自社にとどめず、他社にも広げるのは「業界全体の技術レベルを上げていきたい」から。その先には、「しっかりと技術を研さんする会社が確実に利益を得られる業界」を見据えている。
(東京支社報道部=原崎瑠也)