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若手記者が聴く〜社長、あなたはなぜ建設業を?Eオンデザインパートナーズ(横浜市)西田司代表取締役

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 一級建築士事務所オンデザインパートナーズの西田司代表の父親は槇総合計画事務所から独立した建築家。「楽しそうに働く姿に影響を受けて、建築学科の大学に進んだ」と、ごく自然に同じ道を志すようになった。初めての仕事は大学の同級生と手掛けた実家の設計。父親にも、息子の背中を押したいという思いがあったのかもしれない。
 順調に設計の依頼が舞い込み、30歳になるまでに50〜60件程度の設計に従事。雑誌で紹介されるなど高い評価を受けたものの、30代を迎えた時、「自分の好みが偏ってきた」と感じ始めた。「例えば、大きな窓がうまくいったから次の物件でも使おうと思う。作家性と言えば聞こえはいいが、成長が止まる気がした」。案件ごとに敷地や家族像は違う。以前の成功例をまねれば、他の可能性を奪うことにもなりかねない。「顧客に真摯(しんし)に向き合えているのか」と悩んだという。
 新たな道を開いたのは、建築家の栗生明氏に掛けられた言葉。「20代の君にしかできないことがあるから、一生懸命やりなさい」。思い返すと、確かに30歳になった時、20代の自分と仕事への姿勢が変わっていることに気付いた。どちらが良いというのではなく、年齢を問わず、その時にしか生まれない発想がある。そこから発展し、「自分一人ではなく、違う考えや経験を持つ他者と一緒に考えることで、新しい価値が創り出せるのでは」という思いに至った。
 その考えから始めたのが、パートナーとなる誰かと意見を出し合って一緒に設計する共同設計=B「スタッフの人数分だけ可能性が生まれ、完成する作品の振れ幅が広がった」という。現在、所員は58人。取材当日も、若い所員が大きな丸テーブルを囲んで、笑いながらも活発に意見を交わしていた。
 もちろん、顧客とも一緒にゼロベースでアイデアを出し合って考える。「父はアーティストタイプの建築家だったが、僕はちょっとだけリアリスト。こだわりがないだけかもしれないが」と謙遜するが、根底にあるのは、「建物に正解はない」という気持ちだ。さらに、「仕事をもらえることがモチベーションにつながる。社会に必要とされているということだから」とも。事務所がある関内でまちづくりを支援し、大学で後進を育成する姿は、リアリストというよりも、より社会で役割を果たそうとするアクティビストに映った。
(神奈川支社報道部=丸川優希)