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足りないものは充電インフラ、日本のEV充電インフラの現状と課題 【第5回】分譲マンションの理事長と管理会社に聞く EVユーザーがまだいない分譲マンションでも合意形成がスムーズにできた理由

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 最終回となる今回は、EV充電器を既に設置している京都市の分譲マンション「サンヴェール太秦」の天谷氏(管理組合第35期理事長)と、管理会社である東急コミュニティーの小西氏に話を聞いた。
 同マンションは築35年で、大規模修繕工事をきっかけにEV充電器の設置について検討を始めた。その当時、住民から「設置場所候補の来客用駐車場に設置すると、EVが増えた時に来客者が停めにくくなる」という意見があったものの、「設置することで住民が車を購入する際の選択肢が増える」「マンションの付加価値を高めることが期待できる」と、EV充電器の導入に前向きな意見が大多数だったという。
 理事長の天谷氏は「電気自動車の需要が増える中、マンション内にEV充電器を設置できるスペースがあり、近くの充電スポットとして需要に応えられることと、また、国からの補助金の支援もあり、設置費用を抑えられるタイミングだったことが最終的な決め手になった」と話す。
 また、東急コミュニティーの小西氏は「まだEVを所有する入居者がいないという過渡期の中で費用をかけて設置する選択は難しいが、「マンション側は無償で設置できるというプランが良かった。利用料金の決済もシステムで完結する点は管理会社として魅力的だった」と話す。
 温室効果ガスの二酸化炭素を排出しないEVへのシフトを加速させるためには、EVユーザーの「自宅」にEV充電器を設置し安心して充電できる環境が必要となる。一方で、特に分譲マンションでは、理事会での合意形成が必要となる。
住民が合意形成しやすいプランをEV充電事業者が提案し支援すること、管理会社やマンションデベロッパーも協力して充電器の設置を推進していくことが求められる。

※写真は、今回インタビューにご協力をいただいた、EV充電器の設置が完了している、分譲マンションのサンヴェール太秦(京都市)。

執筆者プロフィール

Terra Charge 椛纒\取締役社長 徳重 徹(とくしげ・とおる)

徳重 徹(とくしげ・とおる)
Terra Charge 椛纒\取締役社長
1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを創業、インドの電動三輪市場でトップシェアを獲得。22年に日本でEV充電インフラTerra Charge事業を立ち上げ、「すべての人とEVにエネルギーを。」をミッションに、新たなインフラづくりに取り組み、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。