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若手記者が聴く〜社長、あなたはなぜ建設業を?F大日コンサルタント(岐阜市)市橋政浩代表取締役社長

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 大学では土木を専攻したが、別の道を模索した時期もあった。結果的に建設業界に入った理由を「子どもの頃、(現相談役の)父が連れて行ってくれる家族旅行は、ほとんど建設現場。ある意味、洗脳だったのかな」と笑いながら振り返る。
 大学卒業後に就職した大手コンサルタントでは、高度道路交通システム(ITS)などを担当。2008年に大日コンサルタントに転職したが、当初は「経営者になるつもりはなかった」という。ただ、「創業家の人間が働く以上、周りを納得させる必要がある」と、技術士の取得や、優良表彰の受賞など、いくつかのミッション達成を当時の上司と約束。それをクリアしていく中で、同僚の思いや、現場の課題への理解が深まり、自然に経営者への道が開かれていた。
 社長就任は20年5月。コロナ禍真っただ中の船出だったが、それを「WEB会議やリモートワークを普及させる好機」と捉え、就任あいさつをオンライン配信で行った。働き方改革を始め、課題が山積する建設業・建設コンサルタント業界の現状も「今は時代の転換点。だからこそ、新しい方法を提案し、変えていくことができる」とポジティブに語る。
 モットーは「仕事は楽しみながらやる」。経営者としても「社員がやりがいや喜びを感じられる会社にしたい」という思いが強い。その第一歩として取り組んでいるのが、多様なキャリアルートの確立だ。「人は多種多様。職種や業務内容の選択肢を増やし、社員の希望とのミスマッチをなくしていく」という。
 ただ、その狙いは社員のため≠セけではない。「社員がやりたいこと、興味を持ったことに取り組めば、できる仕事の領域が広がっていく」。「コンサルタント業務の基本は、課題解決。経営の源泉は、社員から次々に生まれてくるアイデア」と考える市橋社長にとって、その領域拡大は、企業としての裾野(すその)を広げることと同義だ。
 そこから目指すのは、総合建設コンサルタントから建設≠取った「総合コンサルタント」。社会課題が多様化する中で、業界や業種の垣根を越えてサービスを提供する未来図を描く。その戦略の中には、玉石混交のコンサル業界で「公共事業に長年携わってきたことが強みになる」と、自社が培ってきた信頼への自負も組み込まれているようだ。
 インタビュー後、ポジティブな言葉の多さに話がおよぶと「それが経営者としての心がけ」と少しだけ種明かし。「仕事を楽しむ」姿勢に、強(したた)かさと父譲りマインドセットの上手さが隠されていた。(中部支社岐阜支局=信夫惇)