建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

■「土木建設業と環境ビジネス最前線」 =第3回=〜土壌汚染ビジネスの実態〜

いいね ツイート
0

現在、土壌汚染ビジネスに参入していたり、参入を具体的に計画している地域の土木建設企業は数多く見られます。
このビジネスは、昨年2月に土壌汚染対策法が施行されて以来、急速に広がりを見せているビジネスで、潜在需要は4兆円を超えると言われています。現段階での市場規模は約3000億円程度なので、今後、さらに大きな市場になっていくことは間違いないでしょう。広大な工業地帯の跡地はもちろんのこと、中小の町工場やガソリンスタンド・クリーニング工場等、地域の中小事業所等の跡地も確実に土壌汚染の恐れはあります。まだまだ、表面に出ていない問題も多く、法の規制も厳しくなるでしょうから、ビジネスチャンスはますます大きくなっていくでしょう。
土壌汚染ビジネスは、大きく分けて、汚染された土壌の調査事業・分析事業・浄化修復事業の3つのステージに分類されます。
仮に、土壌汚染の恐れがある場合、一般的には、地主はまずゼネコンに調査を依頼します。そして、ゼネコンの大半は、下請の中小の調査会社にボーリング調査を発注します。国内には指定調査機関に認定されている調査会社が2000社弱ありますが、認定を受けているだけの企業もあり、現実的に稼動している調査会社は100社もないのが実態です。そして、その稼動している調査会社の大半は中小の調査会社です。ちなみに、調査の1物件当り単価は、土地の面積やどんな物質で汚染されているか、あるいは、調査レベルをどこまで求めるか(詳細調査か簡易調査か)で、全く違ってきます。それこそ数万円程度の調査から1億円を超える調査事業まであります。分かりやすくする為に、かなり大雑把に平均化すると、数十万円から数百万円と言ったところになっています。
調査した後は、地域中小の分析会社に分析業務が下請されます。分析単価の方も、検出された物質の種類や分析したい物質の種類・数によって変動します。汚染物質1検体当り10〜20万円の分析費用は掛かりますから、5〜10検体調べたとしても、50〜200万円の分析費用が掛かるということになります。
 さて、汚染土壌の調査→分析の後に浄化修復が行われますが、実際に浄化修復までされるケースの方が少ないようです。現法では、土地の売買や用途変更・名義変更等がなければ、浄化修復の義務がないからです。つまり、調査・分析した結果、汚染状況が分かっても放置したままで手付かずという物件がかなり占めているのです。
 浄化修復単価についても、土地の面積・汚染物質の種類・汚染状況によって、1坪あたり10〜300万円とバラツキがあり、平均は数十万円程度のようです。現在の浄化修復の工法としては、汚染土壌を掘り起こして処分場に埋めたり焼却処分したりという、掘削除去法が多く使われています。その他には、薬品を使って洗浄したり、微生物を使ってバイオ分解させる方法などがあります。これらの浄化修復業務も最終的には中小企業の技術会社が下請しており、技術力があれば中小であっても、順調な成長をしている企業があります。
 以上見てきたように、結局、土壌汚染ビジネスを支えているのは、技術力のある中小企業ということが言えます。特に、中小の地域建設企業が新規ビジネスと捉えて上手に展開をしているのです。私どもの顧問先のエイチテック(広島県)は、本業が土木関係で、新規事業として土壌調査事業に参入されて急成長している企業の代表と言えます。是非、ホームページをご覧下さい。

船井総合研究所 環境ビジネスコンサルティンググループ
http://www.eco-webnet.com/

執筆者プロフィール

船井総合研究所 第八経営支援部 部長 菊池功