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建設業の戦略営業 −活動強化編− 第14回(最終回) アドバンテージを取る営業を目指せ(3)

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(1)顧客から聞き取るべき営業情報の明確化
 前回は自社がアドバンテージ(優位に立つ)を取るために求められるキーマン攻略等について述べた。連載の最終回として今回はプロセス管理による顧客攻略について解説する。
 営業担当者がアドバンテージを取るためには顧客訪問活動を通して営業情報をつかんでこなくてはならない。ごく当たり前の話であるが、この情報のつかみ方に個人差があるのが、お分かりだろうか。
 同じ顧客に訪問しても、「顧客に対して何がアドバンテージになるのか」「他社の動きはどうか」等々の情報を掘り起こせる営業担当者と、何も情報を拾えずに帰ってくる営業担当者とがいる。経験値の差と言ってしまえばそれまでであるが、その格差をそのままにしてはいけない。
 厳しい時代に営業組織として営業担当者の取る情報量に偏りがあっては生き残れない。アドバンテージを取るためには組織的に情報収集スキルを高めなくてはいけないのだ。組織的な情報収集力のアップのためには、各営業担当者が顧客からどのような情報を取るかを明確にしていかなければならない。
 ところが意外かもしれないが、顧客に対する訪問活動を行うに際し、どのような情報を取ってくるかが明確でない営業組織が、ゼネコン各社に比較的多いように思われる。
 建築であれば図面を預かったり、用途や予算などの建物の概要を聞いてくるのは当たり前としても、事務所・ビルと商業店舗、工場、倉庫、集合住宅では同じ建物と言っても用途が違うのだから、おのずと聞き出してくるべき情報は異なるはずである。
 例えば、事務所・ビルの見込み案件については、どのような情報を聞き取って帰ってくるのか。これらが営業担当者任せだったりしているのが現実ではないか。
 なぜこのようなことが普通に行われているかと言えば、建設営業が最初に見込みとなる工事物件ありきで、顧客の側で図面などがそろっており、営業担当者はその内容についての聞き取りや見積もりのために図面を預かることなどで事足りていたからだ。
 現在のような不況期になると、図面も何もない工事案件を顧客とともに創造する活動(この連載で何度も述べている仮説提案にもとづく潜在需要を開拓する営業)の重要度が増してくる。だからこそ、工事の案件の種別(建物用途、新築・改修の別等)ごとに、どのような情報を聞き出してくるかを営業組織の中で明確にしておくべきである。
 筆者の営業指導先では、このような種別ごとにチェックシートなどを作成することで、顧客から聞き取るべき情報を明確にし、各営業担当者がどの項目の情報が取れていて、どの項目の情報が取れていないのかが把握できるようにしている。

(2)チーム営業で営業組織力を高める
 この連載の中で営業担当者が顧客に対する活動量を増やし、より1件でも多くの工事見込案件を発掘することの必要性を訴えてきた。
 この不況期を乗り切るためには、一人ひとりの営業担当者が普段の営業活動の質量を倍増させる努力がもちろん必要であるが、個人だけの力ではおのずと限界も出てくる。
 仮説提案にもとづく潜在需要を開拓する営業を推進するためには、営業組織の中で顧客ニーズの創造やアドバンテージを取るための工夫について情報共有しながら、営業担当者全員がその知識・技術を営業現場で活用できる風土づくりが必要になる。つまりは、営業担当者各人が顧客やその見込み案件ごとにどのような商談を行い、どのように受注するためのストーリーを構築するかの営業プロセスを、いかに個人の力量だけに頼らずに営業組織全体の力でつくるかにかかっている。
 毎日の営業活動で蓄積された営業情報や顧客攻略ノウハウを、日報管理やミーティング活動を通して、組織ノウハウとしていくことが組織全体の営業力の強化につながってくる。筆者はこれらの活動をチーム営業と呼んでいる。チーム営業は筆者の著作(「建設業の営業担当者読本」酒井誠一著 (株)日本コンサルタントグループ刊)で具体的に解説しているのでご興味があれば参照していただきたい。
 皆様には是非、この厳しい企業環境をチーム営業力の強化でもって乗り切っていただきたい。

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