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実践!コスト競争力アップ 第8回 社内原価の更新

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 前回までは、A社での社内原価データの蓄積について解説してきました。このようなデータを利用する際に大事なことは、実際に積算や発注で活用する人が検討した社内原価であるかどうかです。A社では、社内原価検討会で、社内原価について検討することになっています。どのようなことを検討するのか、お話をしていきたいと思います。

 はじめに、A社で活用している社内原価ファイル(要はフォーム)について説明しておきます。これは、実にシンプルです。皆さんがよくお使いになっているエクセルのような表形式をご想像していただけたらと思います。横行に商品や工種などの種類が列挙され、縦列に年月が時系列となっており、社内原価の金額の推移や種類毎の金額差異が、一覧になっているというものです。

 さて次に、新たに受注する工事の社内原価の蓄積についてです。A社では市販の工事原価管理システム(以下、管理システム)の情報(発注金額など)を取り出すことにしました。またその作業は、通常業務として総務もしくは経理担当者が行う、ということにしました。しかし、その為には、工種や商品名の知識がない総務、経理担当者が困らないように、管理システムの入力時点から、データ入力のルールを明確にしておくことが重要になります。

 A社では、現場代理人や積算担当者など、実際に管理システムにデータを入力する人が複数いるため、@工事番号を必ず入力することA商品の単位は、公共建築工事標準単価積算基準などを基準とすることB商品名をできるだけ統一すること―などをルール化しました。特にA、Bを統一化しないと、同じ商品にも関わらず、別の商品と間違って扱ってしまうことが発生してしまいます。
 そこで、管理システムのマスターデータを整備し、それをもとに入力をすることにしました。

 また、管理システムのデータを社内原価ファイルに取り出す作業タイミングは、社内原価検討会の直前、月1回としました。特に現場の知識がない担当者が行っていますが、マニュアルやルールが整備されているので、負担なく進められています。

 続けて、社内原価の検証についてお話していきます。

 社内原価検討会は、社長、K専務、工事部長、積算部長等を中心に行っています。一つひとつの内容の検証に時間がかかるのでは、と危惧していましたが、工種を絞り込んでいたため、思ったほどの検証数とはなりませんでした。

 具体的な検証内容は、工事内容や資材、商品ごとに、時系列で比べ、「同じ商品なのに、なぜ高くなっているのか」と議題に上がった際には、「工事の規模」「工事の容易さ」「以前は他工事と併せて価格交渉した」など、原因を一つひとつ確認していくことです。

 また、外注先や資材仕入業者の動向についても、議題に上がることもあり、今まで個人的な情報にとどまっていたものから、全社的に、価格や業者などについて情報共有がなされ、「社内原価」が構築されています。

 次回からは、業務(積算・発注・実行予算管理)に社内原価を活用したメリットについて、お話していきます。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ