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実践!コスト競争力アップ 第9回 社内原価の活用(積算)

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 前回までは、A社での社内原価データの蓄積と更新、社内原価検討会での検証についてお話してきました。社内原価とは、過去の発注金額に基づいて、工種や資材ごとに原価検討会で検討し、社内で一番安いとされる金額を指してきたわけですが、今回からは、業務(積算・発注・実行予算管理)で社内原価を活用するメリットを解説します。

 はじめに、積算業務で社内原価を活用するメリットについてお話していきます。

 大きなメリットは、積算をする際に、社内原価を積算単価に活用することで「積算価格のたたき台(目安)」が作成できることです。

 多くの企業では、通常仕入先(外注先や資材発注先)からの見積りを基に、積算されていると思います。しかし、仕入先の見積り金額は、仕入先自身の利益や、発注先からの値引き要請を想定し、実際の発注金額よりも上乗されていることが多いです。

 そこで、積算担当者や現場代理人は、「発注の際には、見積り金額がここまで下がるだろう」という、過去の経験もしくは勘で、金額を大まかに落とし、積算単価としていることが多いのではないでしょうか。

 各担当者の経験や勘は、明確な基準があるわけでもなく、担当者以外には分からないものです。そうした際に、前述の社内原価を積算単価に活用すると、社内で一番安いとされている金額がベースとなるので、十分な根拠を持った積算となることは、お分かりいただけると思います。

 しかしながら、社内原価を積算に活用できるからといっても、通常行っているように、仕入先から見積りを取っておくことは必要です。なぜなら、社内原価は過去の発注金額がベースになっているため、積算時には、市場価格が大きく変化している場合があるからです。

 さて、実際に工事を受注していくには、
「入札価格 = 積算価格 + 自社の利益」
という考え方が重要です。

 そのためには、ライバル企業の動向を見据え、『利益は○万円欲しいが、実際の受注見込額を推測すると、利益が△万円となる金額を入札価格とする』ことを決定していくのです。ライバル企業の情報は、営業部が把握していますので、営業担当者とも連携していくことが重要になります。

 またA社では、工種の拾い方や標準工数(標準歩掛)の積算方法、ルールについて、社内の統一化にも着手しました。個人によって、工種の拾い方、標準工数(標準歩掛)がまちまちで、同じ工事を積算しても、最終的な金額が違うということが少なくなかったからです。社内原価に加え、積算ルールを統一化することで、積算の精度が向上しました。

 営業を担当しているK専務から、「入札価格がライバル企業と競争しても競り勝つようになってきた」との声が聞かれるようになってきました。

 次回は、続けて社内原価を活用した発注業務のメリットについてお話します。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ