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実践!コスト競争力アップ 第10回 社内原価の活用(発注)

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 前回の積算業務と同様に、社内原価の活用を考える際には、発注業務の効率化も併せて実施することが重要です。

 発注業務は、購買権限の違いを基準とすると、大きく分けて、@集中購買A現場代理人による個別購買−の2種類があります。「どちらの発注方法が良いのか」という質問を良くお聞きしますが、どちらか一方が良いということではありません。発注業務の効率化を図る上では、集中購買、個別購買の長所・短所を考慮し、購買項目ごとに、どちらの購買方法が自社にとってよいのかを明確にすることが大切です。

 例えば、集中購買すると、個別購買と比べて、スケールメリットが出せます。そこでA社では、繰り返し発注をしているもの(材料、労務費など)を、社内原価データよりリストアップし、それらについては、集中購買することとしました。過去の年間発注量や価格をベースに交渉することで、仕入先も根拠のある発注量を踏まえて、価格が下げやすくなるようです。

 しかし、施工方法を協力会社とVE検討しコストダウンを図るものや、現場の条件によって大きく単価が変わるものについては、現場ごとに仕入先と交渉した方が、変更や追加などの交渉の手間が少ないことから、現場での個別購買としています。

 A社では、個別購買の際には、工事現場の事務所で、仕入先と交渉をする機会が多い現場代理人が、社内原価データを活用し、現場で即座に価格の確認をしています。そうすることで、現場代理人ごとに、価格が異なることを防止できています。
 発注金額が適正かどうかを調べるために会社に戻り、過去の資料を探す手間がなくなるため、現場代理人にとって大きな負担軽減となっています。

 また、社内原価には、取極め率(見積と発注金額差の比率:例えば取極め率80%とは、見積金額100%に対し80%が発注金額となるということ)のデータも残しています。実は、この取極め率は、仕入先により大きく違います。見積金額が高く取極め率が低い業者●●社と、見積金額が低く取極め率が高い××社では、最終金額としてどちらが安くなるのかを確認する必要があります。

 この取極め率のデータを活用すると、仕入先や仕入先の担当者によって異なる見積金額の算出傾向が分かり、どの程度まで値下げが可能かを予想できるという、メリットがあります。

 次回は、実行予算管理業務に社内原価を活用するメリットについてお話します。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ