建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

法律が作った土壌汚染 第8回 「規制項目と基準値について」@

いいね ツイート
0

 土壌汚染対策法で規制されている規制項目は以下3つに分類されています。第1種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第2種特定有害物質(重金属等)、第3種特定有害物質(農薬等)です。
土壌の基準としては全ての項目で溶出量基準が決まっています。汚染土壌から溶け出した有害物質が地下水を汚染し、その地下水を飲むことで健康被害を引き起こすことを想定して決められている基準です。溶出量基準はさらに汚染の高いレベル(10〜30倍)の第二溶出量基準が決められています。第二溶出量基準を超過すると、より厳重な土壌汚染対策を求められることとなります。溶出量基準と同じ値で地下水についても土壌汚染対策法で基準が決められています。
 土壌の基準としては第2種特定有害物質(重金属等)だけに含有量基準が決められています。これは汚染土壌の粒子を直接口から取りこんだときの健康被害を想定して決められています。
 第1種特定有害物質(揮発性有機化合物)は11物質あり、そのうち10物質が塩素を含んだ有機化合物です。塩素を含むため水より重く、DNAPL(Densen Non Aqueous Phase Liquid:比重が水より重い液体)と呼ばれています。トリクロロエチレンや四塩化炭素など、名称にも「クロロ」や「塩素」の名称を持つ化合物です。塩素を含む有機化合物は有害性が問題になるものが多く、ダイオキシン類、フロンなども塩素を含む有機化合物です。11種類の揮発性有機化合物の内、一種類だけが塩素を含まない有機物でベンゼンです。こちらは石油系炭化水素一種で、塩素を含まないので水より軽く、LNAPL(Light Non Aqueous Phase Liquid:比重が水より軽い液体)と呼ばれています。
 第2種特定有害物質(重金属等)は9物質あります。重金属「等」と呼ばれているように、重金属は9物質のうちカドミウム、鉛、砒素、六価クロム、水銀、セレンの6物質です。残りのふっ素とほう素は軽元素であり、シアンは炭素と窒素の化合物です。シアン以外は自然の地層にも僅かながら普遍的に存在し、火山性地質や熱変性地帯などや海性の堆積物などでは濃度の高い部分があり自然由来によって基準を超過することがあります。
 第3種特定有害物質(農薬等)は5項目として基準が定められています。このうちチウラム、シマジン、チオベンカルブ、有機りんの4項目は農薬です。このうち有機りんは4種類の有機りん系農薬の総称です。PCBはかって製品として作られていた化学物質(物の燃焼でも一部できます。)です。以上、第3種特定有害物質は物質数としては合計8物質となります。
 さて、これらの特定有害物質の有害性はどのようになっているのでしょうか。詳しくは次回以降のお話しにするとして、まずは全体でどうかについて考えてみます。
 図1(リンク願います。)に特定有害物質の溶出量基準のレベルについて、濃度を縦軸にとり並べたものを示します。縦軸の上の方が基準濃度が高いので、毒性は低く、縦軸の下の方が僅かな濃度でも基準を超えるため毒性が高いことを示しています。図1の溶出量でみると、基準値の一番高いほう素及び1,1,1-トリクロロエタン(それぞれ1mg/ℓ)に対して基準値が最も低い水銀やPCB(それぞれ0.0005mg/ℓ)ですから、その差は2,000倍あり基準値という物差しで単純に考えれば水銀はほう素の2,000倍の毒性があるということになります。同様に含有量基準ではほう素及びふっ素の4,000mg/kgに対して水銀が15mg/kgですからその差は266倍ということになります。
 基準値は毒性に基づいて決められていますが、溶出量基準のうち慢性毒性については体重50kgの人が飲料水を1日2ℓ、70年間飲み続けるとして、汚染土壌から溶出した水を地下水として飲んだ時の場合を想定して健康被害のない濃度を設定しています。項目によっては急性毒性を根拠に定められている項目もあります。
 含有量基準は汚染した土地に70年間住み続けた場合に意図せずに汚染土壌を口から取り込んでしまう量を想定して健康被害のない濃度として設定しています。
 以上が、基準を決めた根拠として環境省などから公表されている内容の概要ですが、ここの項目について見ていくとちょっとおかしいと思うものもあり、また、根拠不明の項目もあったりします。次回はその話をいたします。

執筆者プロフィール

九官鳥 地質調査会社社員 メールアドレスhza01754@nifty.ne.jp