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法律が作った土壌汚染 「規制項目と基準値いついて」G

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【カドミウム】
 カドミウムは、富山県神通川流域におけるイタイイタイ病の原因として知られた重金属です。原因は、神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所が、亜鉛製錬後に出るカドミウムを含んだ排水を神通川に流していたためです。汚染された土壌から農作物へカドミウムが移行し、その農作物を住民が長年にわたって摂取したことで発症しました。主な症状は骨軟化症と腎臓の尿細管機能障害です。
 カドミウムは亜鉛に性質がよく似ていて、亜鉛鉱石中に微量に含まれ亜鉛精錬の副産物として得られます。最近の用途はニッケル−カドミウム電池がそのほとんどを占めています。それ以外の用途は環境規制によって代替品への切り替えが進み激減しています。廃ニッケル−カドミウム電池はリサイクル法で店頭回収されることになっていますがその回収率は10%程度といわれています。ニッケル水素電池やリチウム電池などもっと性能のいい電池もでてくる中で、業界はカドミウムの捨場所として電池を使っているという方もいます。代替電池が出回るようになると業界はますますカドミウムの不良在庫を抱えることとなります。
 最近、米に含まれるカドミウムの基準の見直しがWAO/WHO合同食品企画委員会(コーデックス)で行われ、「精米中濃度として0.4mg/kg」という値が決められました。一時期玄米中濃度として0.2mg/kgが検討されたこともありました。一般的な日本人のカドミウムの暴露量は試算によれば99.9%以上が食品経由です。米経由がその約半分にあたり米中の濃度を監視することはカドミウムによる公衆の健康被害を監視する上で重要ですね。
 ところで、カドミウム暴露の飲料水としての寄与は0.03%で、土壌にいたっては0.005%です。一般公衆の健康被害とローカルな環境問題は違うとの考え方もありますし、土壌汚染がやがては食物汚染へとつながるとの考えもありますが、環境施策としてもっと考えなければいけない方向性があるのではないでしょうか。

【セレン】
 セレンは過剰に摂取すると毒物でもあり、体に必須の元素でもあります。職業上の蒸気の暴露で嘔吐、気管支炎、肺炎などが見られたとの報告があります。家畜のセレン中毒やセレン欠乏症が報告されていますが、人ではその事例は多くないようです。中国の地方病としてセレンも少ない食事による心筋障害があり、セレンを投与することで治療及び予防することができたとの報告があります。
 セレンの面白い性質があります。水銀中毒を緩和するのです。ネズミに水銀とセレンを与えた場合、水銀を投与したネズミは、全部死亡しますが、セレンと水銀を同時に与えたネズミは全部生き残ったという実験です。そして、肝臓中の水銀量は、水銀だけを与えたネズミよりセレンと水銀を与えたネズミの方が多くなっていました。これは水銀とセレンが結合して無毒で安定な化合物をつくり、肝臓に沈着するからだと考えられています。
 セレンは近くを構成する元素のひとつです。一般的な土壌では、平均で0.4mg/kg程度含まれています。土壌溶出量基準は鉛などと同じ0.01mg/Lで、調査をやっていると時々基準を超過することがあります。ほとんど自然由来と思われますが、報告や対策は通常通り行っています。金属としての流通量も少なく、重篤な汚染もあまり聞いたことがありません。土壌基準として必要な項目なのでしょうか。

執筆者プロフィール

九官鳥 地質調査会社社員  メールアドレスhza01754@nifty.ne.jp