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建設トップランナーの挑戦 第1回 舟山組(北海道北見市)

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気候風土を生かしたハーブ栽培に活路
―建設会社が農業法人を設立―
株式会社舟山組(北海道北見市、代表取締役舟山秀太郎)

【公共土木をメーンに成長】
1949年に創業し、初代は建築・とびを中心に、特に曳き家工事を得意とした。その後、区画整理事業や街路事業の拡大とともに、曳き家の現物見積もり補償から補償算定業務へと進化。現在では、当社の補償コンサルタント部門となっている。

2代目は土木工事を中心とした事業を展開し、公共工事の土木の指名業者となった。地域では後発だったため、街路樹・公園樹などの植栽を中心とする造園工事を手掛けた。現在は3代目社長の下、公共工事部門(土木、建築、造園)と補償コンサルタント部門を事業の骨格としている。

【条件生かしハーブ栽培を選択】
新規事業への取り組みは91年から。公共事業の将来的な縮小が避けられない中で、高齢従業員の第2の職場づくりという意味合いも含め、舟山組ハーブ事業部を設立した。将来を見据えた農業分野へ挑戦である。

それ以前から、農業の在り方には疑問を感じていた。事業化するならば、農薬や化学肥料、除草剤を一切使用しない農業を目指したい。そのための作物として「ハーブ」に目を付けた。

かつて北見オホーツク地域は世界最大のハッカ産地であり、気候風土の条件がハーブに適していると予想された。確かに、北見は冷涼な気候であり、日照率日本一といわれるほど晴天に恵まれ、昼と夜の温度差が大きい。北見盆地の中にあって風も強く吹かないなど、ハーブ栽培には最高の気候風土だった。

また当社とすると、街路や公園の植栽事業が終焉を見せ始めた造園部の苗圃4fが遊休地となっていた。長年農薬などの被害を受けていない同地の有効活用としてもうってつけだ。

【農業法人の認可でさらなる展開】
ハーブの栽培・加工・商品化については、国内にビジネスモデルがなかった。まずは自社にハーブの専門家を育てるところからスタートしなければならなかった。栽培・加工・商品化・販路開拓まで、独自のやり方で進めざるを得ず、大変な試行錯誤を重ねた。特に農林水産省によるオーガニックの認証制度ができる以前の取り組みだったため、無農薬・無肥料の自然栽培について、周囲の理解を得ることに時間を要した。

事業が軌道に乗ってくると、農地を求める場合など、建設会社としての展開に不自由さも感じ始めた。農業生産法人の認可を目指し、97年1月にようやく取得。有限会社香遊生活としてハーブ事業を分離独立させた。

現在ハーブ60種類と野菜20種類ほどを完全無農薬・無化学肥料で栽培している。2fに満たない大きさでスタートした耕地面積は、周辺の耕作放棄地を借り上げることで13f程度まで拡大した。

100%自社栽培したものだけを原料とするハーブティーは、シングルとブレンドで30種を超える。地元の飴工場に委託しているハーブキャンディーは4種。オホーツクカモミールの商標を持つカミツレエキスによるコスメ商品も製造委託している。特にカモミールのスキンクリーム、入浴剤は、2010年に本州から道内に製造委託先を移し、北海道発コスメとして認知されるようになってきた。

【農商工連携の認定も】
08年7月には、「建設業からハーブビジネス事業への進出」が北海道科学技術振興財団と連名で、「農商工連携88選」(農林水産省・経済産業省)の認定を受けた。地元の北見工業大学、北見工業技術センター、オホーツク食品加工技術センターなど産学官で構成する「産業クラスター研究会オホーツク」と連携し、ズッキーニ酢など多くの商品の開発・販路拡大に取り組んだことが評価されたものである。

【札幌市中心部に直営店を出店】
創業20年となった10年には、札幌市内に直営店「ファーマーズハーブ」を出店した。

従来の販売戦略は、物産展への出店が主流だった。近年では、デパートの北海道物産展の開催期間が長期化しているが、一方で物産展の催事そのものを取りやめるデパートも増えている。直営店を開設するのは時代の流れだった。

また、ハーブという「説明が必要な商品」を売るためには、直営店を持つことが最も有効であると以前から考えてもいた。札幌市中心部の好立地の施設(大通ビッセ)の紹介を受ける機会があり、出店を決意した。

【夢は東京、海外へ】
シンガポール伊勢丹が開催する北海道物産展に参加し、初めての海外も経験した。予想を超える評価を受け、元気なアジアへの販路開拓を真剣に検討し始めたところである。

また、札幌の直営店で店舗運営の努力を重ね、数年後には、その成功体験を持って東京進出を果たすのが夢である。

企業プロフィール
【会社名】株式会社舟山組
【代表者名】代表取締役舟山秀太郎
【所在地】北海道北見市寿町6ノ3ノ4
【電話】0157(23)5070
【資本金】2000万円
【創業年】1949年4月
【社員数】20人
【URL】http://www.funayamagumi.co.jp
【事業内容】土木、建築、造園、補償コンサルタント業務
【関連会社】農業生産法人(有)香遊生活=ハーブの栽培・加工・販売、直営店ファーマーズハーブ(札幌市)
【複業含む就業者数(パート含む)】40人


※連載「建設トップランナーの挑戦」は、書籍『複業のすすめ』(米田雅子+地方建設記者の会、当社刊)の中から、新しい挑戦を行う全国の中小建設業の取り組みを抜粋して紹介していきます。書籍の詳細・申し込みはhttp://www.kentsu-it.jp/book/book.html