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建設業法の基礎知識 〜行政書士業務より〜 第2回 完成工事原価って?

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―建設業決算変更届の財務諸表のうち、完成工事原価報告書の作成方法について教えてください。

 「基本的には、前回お話ししました売上額の記載方法と同様に、建設業にかかる原価と、それ以外の事業の原価に配分して記載することになります。しかしいくつかの落とし穴がある部分でもありますので、まずその部分をお話しします」
 「完成工事原価報告書は、記入項目としては非常にシンプルです。材料費の項目には、直接購入した材料費を、労務費には、工事に従事した直接雇用の作業員の給料等を、外注費には、下請工事契約額を、経費にはそれ以外の費用を記入します」

―当社の今期の税務署に提出した原価報告書には、材料費と外注費のみが計上されています。これをこのまま記入すればよいですか。

 「もし本当に当期の原価性のある支出がその2項目だけならば、その2つを記入することになります。しかし一般的には原価性のある支出が誤って販売費及び一般管理費の中に計上されていると考えられます。工事監督員の人件費は、完成工事原価報告書の経費の中の、うち人件費という項目に記入しなくてはいけません。このような方の給料等が販売管理費に計上されていないかどうかを最初にご確認ください。経費のうち人件費に相当する支出は、全ての工事について建設業法第22条第3項又は第4項の一括下請負の禁止の除外を受けるための発注者からの承諾を受けているか完成工事高が全くない場合でない限り、必ず計上されるはずです。他の項目も同様にご確認ください」

―当社の場合、総製造費用の後に期首仕掛品棚卸高と期末仕掛品棚卸高が計上されているため、損益計算書の原価と完成工事原価の各項目の合計が一致しません。これはどうすればよいのでしょうか。

 「期首と期末の仕掛品棚卸高は、決算期をまたいだ原価支出を表示するための項目です。建設業の完成工事原価報告書に記載する各項目の数字は、あくまでも当期に計上した完成工事高に相当する各項目の原価を記入するものです。一方御社のこの税務署に提出した原価報告書に記載されている項目の数字は、当期に支出した各項目の原価が、当期の完成工事高に相当するかに拠らずそのまま計上されているため、一致しなくても全く問題ありません。以上の基準に従って税務署に提出した原価報告書に拠ることなく、各項目に計上される金額を計算し直す必要がございます」

石田行政法務事務所 行政書士 所長 石田知行
http://www.ishida-tomoyuki.com