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大地を知る ―地質情報を生かすために
第6回 放射性廃棄物の地層処分

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 地球温暖化対策やエネルギー施策の見直しを受けて、太陽光や風力、波力、地熱などに代表される再生可能エネルギーが注目されています。
 現在、日本の各地でそれぞれの土地の特性を活かしたエネルギーの活用が図られています。開発の適地選定では、潜在的なエネルギー源の有無だけでなく、建設費・供給バランス・維持管理を含めたトータルコストや環境保全、生活への影響までもが考慮されます。
 日本は、半世紀近く原子力発電の恩恵を受けてきましたが、今は放射性廃棄物の処分問題に直面しています。その一つが地層処分の適地選定です。変動帯である日本列島では、火山・活断層や隆起速度の早い地域を避け、相対的に安定した岩体や地層を選定することが重要です。
 放射性廃棄物を地下深く埋設して人間社会から半永久的に隔離するには「廃棄物を包む人工材料が全て溶解した」とする想定外の事象も考慮し、その後に起こる岩盤内の化学変化や地下水の動きを数万年単位の時間軸で予測する必要があります。しかし、いま研究室内でできる類似実験は、数年オーダーまでです。
 放射性元素を長期間吸着し、保持するという意味で、地下深部に埋設される廃棄物を取り囲む岩盤のことを天然バリアと呼びます。
 例えば、カナダのシガーレイク鉱山で発見された粘土鉱物で覆われたウラン鉱床は、約10億年前に形成されたものです。これだけ長期間にわたってウラン鉱床が消失しなかった原因は、粘土鉱物が持つ天然バリア機能が作用したからです。
 地層処分の安全性を知るには、自然界における類似の地質現象から学び、長期的な知見と高度な実験成果を適切に組み合わせて理解する必要があります。結果的に、そうした努力が数万年先の予測結果に含まれる不確実性を減らし、社会的受容を生むのです。

写真:地下750メートルの岩盤バリア 〜割れ目充填鉱物〜(名古屋大学博物館 吉田英一氏提供)

執筆者プロフィール

基礎地盤コンサルタンツ(株)中部支社 地質部長 仲井勇夫

仲井勇夫
基礎地盤コンサルタンツ(株)中部支社 地質部長