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加速する 建設業のM&A
第2回 M&Aは相手選びの視野を広げて

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 建設業のM&Aの様相は独特といえます。他業界を見ると、調剤薬局、食品卸、運送業、学習塾などの業界は活発にM&Aが行われており、業界再編の真っただ中です。これらの業界でのM&Aのキーワードは「集約化」です。同業の大手グループが規模の経済を追求し、中小企業はその傘下に入るか、淘汰されるか、という状況です。

 一方建設業はというと、単純に規模の経済を追求するM&Aはそう多くありません。建設業界の経営者は、どのような企業と組めば「中長期的に経営が安定するか、成長するか」という考えのもと、M&Aを実行しています。譲受企業が明確な戦略を持ってM&Aを実施することは当然ですが、譲渡企業も戦略を持ってM&Aを実行しているのが建設業といえます。同業だけでなく、どの業種の企業に譲渡するかで今後の自社の方向性が変わってくるため、譲渡する側の相手選びが重要なのです。

 例えば、電気工事業の譲渡企業の場合は、同業の他に、設備工事業、ビルメンテナンス、電材卸、施設運営、太陽光事業など隣接業種の企業も候補先として考えられます。「技術力を移管してもらい自社も成長したい」「社員がグループに溶け込みやすいように」という理由で同業を選ぶ経営者もいれば、「今までとは異なる切り口で受注機会を拡大したい」「同業でない方が独立性を保てそうである」という理由で隣接業種を選ばれる経営者もいます。このように、建設業界ではお互いにとって相乗効果が最大になるマッチングを追求し、さまざまな組み合わせのM&Aが多数実現する傾向が顕著です。

執筆者プロフィール

日本M&Aセンター 西田賢史

西田賢史
日本M&Aセンター
日本M&Aセンター URL:http://www.nihon-ma.co.jp/