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インフラの町医者をどう育てるか 第7回 第9回建設トップランナーフォーラムより

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 パネルディスカッションは「インフラの町医者をどう育てるか」をテーマに、少子高齢化や人口減少が進展する中での人材確保、育成について意見を交わした。
 
 パネラーは元国土交通省技監の菊川滋氏、日経コンストラクション編集長の野中賢氏、富士教育訓練センター専務理事の菅井文明氏、大沼組(秋田県)社長の大沼武彦氏、砂子組(北海道)社長の砂子邦弘氏、日本青年会議所2014年度建設部会長の河合良紀氏(宮城県)。コ―ディネ―タ―は建設トップランナー倶楽部代表幹事で慶應義塾大学特任教授の米田雅子氏が務めた。

  ◇    ◇

 まず大沼氏が、町医者の重要な役割の一つとして地域建設業が除雪を行っていることを述べた上で、「オペレーターの高齢化、確保が課題になっている」と指摘。除雪業務は出来高支払いのため、「多い時と少ない時の差が大きい」という実情も説明した。

 河合氏は東日本大震災の被災地の現状として、「全国からの応援で復興需要に対応しているが、オリンピックや国土強靭(きょうじん)化で、応援部隊を被災地から地元に戻す動きも出てきている」ことを明らかにした。新たな人材の確保に向けては「震災後、公共事業と建設業の役割が見直されつつある状況だが、この機会を逃さず建設業の魅力をアピールすることが重要」と主張した。

 野中氏は「自治体の橋梁の未修繕率は市区町村で95%。橋梁保全に携わる土木技術者数は、市区町村の34%でゼロ人となっている。自治体では面倒をみきれないことは明らか。一方、建設会社の数は全国で約48万者(12年度)。1741市区町村数のうち、建設会社がないのは6村のみだった。このことからも、建設会社が橋の面倒をみるのが一番自然ではないか」と主張した。

 菊川氏は「政策には短期的なものと中長期的なものがある。短期的なものはわかりやすいので応援団もつく。中長期的な課題は短絡的に批判されるターゲットになってしまう」と述べた。関連して横軸を緊急性、縦軸を重要性にした図を示した上で、「重要だけれども緊急ではない」部分がおろそかにされてきたと指摘。「建設産業の担い手」の問題はその部分に該当すると主張を展開させ、「追い風が吹いている時期にこの部分にしっかり取り組み、将来に向けての基盤をつくる必要がある」と力説した。

 論点の一つとなった「多様な人材の活用」の中では、女性や外国人材の活用についても話し合った。砂子氏は「当社では女性技術者の登用を建築、土木で進めている。これからも大歓迎で、どんどん進めていきたい」との経営方針を示した。

 菅井氏は、若い学生たちの建設業入職の阻害要因の一つは保護者や先生にあるともいえるとした上で、「『ものづくり』に対する楽しさを実感したことがなく、建設業への親近感や現実感の薄さが拍車をかけている」と強調。「富士訓練センターでは、学生の体験学習だけでなく、保護者や先生の見学会を実施している。この送り出す側と受け入れる側との交流と信頼関係が密になれば、状況は好転するのではと期待している」と述べた。

<後半に続く>

執筆者プロフィール

地方建設専門紙の会
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