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■「建設業の戦略営業 ―基本編―」=第1回 〜建設営業担当者の勝ち組、負け組みの時代に入った〜

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今年は全国的に記録的な大雨が多く、各地に大きな被害をもたらした。読者の中で大雨にともなう災害対応等に追われた方々も多かったのではなかっただろうか。梅雨が長く続いても、その後に梅雨が明ければ夏の眩しい日差しが照りつけてくるのを日本人は知っている。
 景気は上向いてきたと世間では言われている。バブル崩壊後の日本経済の長い停滞期を過ぎ、株価が上がり、金利が上昇するという待ち焦がれた景気回復局面を迎えてきている。
 しかしながら、我々建設業界の梅雨明け、すなわち景気回復はいかがだろう。確かに一部の大手ゼネコンは国内景気の浮揚にともなう工場、ビル等の民間建築工事を中心とした受注の伸びに支えられ、好調な業績を示している。
 だが、それは54万者の建設業界のほんの一握りのケースであり、筆者が全国の地場建設企業に訪問すると聞こえてくるのは、景気回復とは程遠い、悲鳴に似た声がほとんど。梅雨明けどころか夏、秋を通り越して厳冬の時代に突入している感すらある。
 あらためて言うまでもないことであるが、民間工事(特に建築工事)は価格至上主義のデフレ現象がまったく解消されておらず、昨年来の鉄鋼関連や石油化学関連の製品の高騰もおいそれと価格転嫁できない状況となっている。
公共工事は平成11年から毎期連続の減少に歯止めが掛かっていない。入札制度改革にともなう一般競争入札の増大や電子入札の施行、そして談合事件に端を発した独占禁止法の強化、業界全体のコンプライアンス宣言等により、公共工事の受注競争は激化し、ダンピング的な受注も横行している。
このような状況が長引くにつれ、建設企業の受注・完工高は年々下がり、企業によっては背に腹は変えられずリストラを断行するところも出てきている。特に、従来は企業の第一線で受注活動を行ってきた営業担当者がこのリストラの憂き目にあっているケースも耳にする。
建設企業の中でとりわけ公共工事を主に活動してきた企業の営業担当者は会社の古参社員や役所OBを中心としたいわゆる業界担当として受注機能を担ってきた。しかしながら、かつての現場説明会は閲覧方式となり、さらに電子入札となってからは、旧来の“話し合い”の手法は通用しなくなってきた。
これからの官庁営業は、予定価格を調査することよりも、自社がいくらで施工できるのかを積算できる能力が求められる。さらに総合評価方式が本格的に導入されれば、単なる営業担当者よりも技術的な裏づけを持つセールスエンジニアでなければ生き残っていけない。
また、公共工事主体で事業を行ってきた企業は、今後の官庁市場の縮小をふまえて急速に民間市場へ舵を切ろうとしている。民間市場も決して参入がたやすい市場ではないが、マーケットボリュームの将来性は官庁市場よりは確実にある。このような中で、旧来型の官庁営業担当者が会社の思惑通りに民間市場を開拓できているかというと結果は芳しくない。
民間工事は役所工事の営業とは違う。顧客に面談すること自体が生やさしい仕事ではないのだ。顧客に訪問した際のお辞儀・挨拶などの基本動作・マナーから始まり、顧客の様々な要求に柔軟に応え、シビアな価格要求にも組織的に対応しなければならない。
旧来型の官庁営業が業界人脈に頼った「始めに役所の出件予定ありき」の引き合い型の営業とすれば、民間工事は「顧客ニーズを探り、引き出し、提案する」提案型の営業となる(民間工事でも引き合い型の営業は存在するが、そのような営業スタイルは早番限界が来る。この事については次回以降に詳述する)。
いよいよ建設業界の営業担当者にも勝ち組、負け組の時代が到来した。旧来型の引き合い営業に固執した負け組営業となるのか、それとも企業の命運をかけて民間市場に打って出ていける提案型の勝ち組営業となるのか、あなたはどちらの道を選択するのだろう。
これから勝ち組営業に残るための戦略営業の基本を連載していく。読者諸兄がこの連載をとおして勝ち組に変身されることを期待したい。
以上

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執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所副部長コンサルタント 酒井 誠一