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知財ってなんだ? 第4回
実用新案権登録の要件とは…「新規性、進歩性を満たしていれば無審査で」

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 実用新案権は、特許権と同様、実用新案登録を受けようとする考案が、(1)実用新案法上の考案に該当すること(2)新規性を有すること(3)進歩性を有すること―の三つが主な登録要件となります。また、アイデアを独占排他的に保護する点についても特許権と同様です。

 では、特許と実用新案はどこが違うのでしょうか。今回は実用新案権について、特許との違いやメリットなどについてご説明します。

 まず、最も大きな違いは、特許権が新規性、進歩性を有するか否かの実体的審査を経て権利が発生するのに対し、実用新案権はこのような実体的審査をすることなく、無審査で登録される点です。特許権を取得するには、特許庁に審査の請求をしてから1〜2年程度を要するのが通常ですが、実用新案権は出願から2ヶ月程度で取得することができます。特許のような審査請求料(通常15万円程度)もかかりませんから、登録費用を安く抑えることもできます。

 このように実用新案は無審査で登録されることが大きな特徴ですが、新規性、進歩性の要件を満たしていなければ有効な権利とはいえません。そこで、実用新案制度では、実際に第三者に権利行使をする際に、新規性、進歩性を判断する「実用新案技術評価」を特許庁に請求することが義務付けられており、この技術評価で新規性、進歩性がないと判断された場合は権利の行使が困難になります。

 とはいうものの、実用新案権は短期間で取得できるため、製品に「実用新案登録済」の表示をすることにより、模倣品の発生を抑制するメリットがあります。権利行使についても、出願前に十分な先行技術調査を行い、新規性、進歩性のある考案について実用新案登録を受ければ、実際に権利を行使することも可能となります。

 また、実用新案登録の出願から3年以内であれば、実用新案登録と同じ出願日を確保しつつ、同一内容で特許として出願し直すことができます。実用新案登録出願は、特許出願のような審査請求料が必要ないため、出願時に製品化の予定がないアイデアについては、まず実用新案で出願して費用を抑え、後に製品化することになった場合、3年以内に特許出願に乗り換えるという、戦略的な出願も可能です。

 建設分野では、特許出願が年間8,000件ほどあります。他方、実用新案は年間500〜600件が出願されていて、実用新案権も建設分野におけるアイデアの保護手段として十分に利用されています。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。