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知財ってなんだ? 第5回
意匠権の登録対象は…「戸建て住宅、マンションも可能」

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 特許権や実用新案権は主に技術的なアイデアを保護するものですが、物品のデザインは意匠権によって保護されます。意匠も特許と同様、新規性が登録要件であり、先に出願された登録意匠や公知の意匠と同一、または類似の意匠は登録を受けることができません。

 しかし、意匠は、出願から数カ月で登録されるため、特許と比べると時間と費用をかけずに権利を取得できます。また、新規性などの実体的審査を経て登録されるため、無審査で登録される実用新案権のように権利行使の際の制限を受けることもありません。

 意匠権の効力は登録意匠と同一、または類似の意匠におよびますが、類似の範囲は決して広いとはいえません。しかし、例えばデザイン性の高いヒット商品の模倣品は形状の酷似した意匠が多いため、こうしたデットコピー対策として意匠権は有効な手段となります。

 意匠法の保護対象は物品のデザインですが、その物品は量産可能な動産でなればなりません。このため、デザイン性に優れたものであっても、絵画や彫刻などの一品製作物や土地に定着した不動産など、量産されない物品の意匠は登録を受けることができません。

 しかし、実際には、一戸建て住宅やマンションなどの建築物のデザインが「組立家屋」という物品名で数多く意匠登録されております。例えば、組立式のバンガローは土地に定着する前は「動産」として流通可能であり、これと同様にマンションや建売住宅も「組立家屋」として土地の定着物のように扱っていないのです。

 また、登録意匠の類似範囲(権利範囲)は広範ではありませんが、意匠権をより有効に活用するために、意匠法では、部分意匠、関連意匠、組物の意匠、秘密意匠および動的意匠といった意匠を登録する特有の制度があります。

 簡単な説明になりますが、部分意匠制度は意匠全体の中で独創性のある特徴的な部分のみについて登録する制度、関連意匠制度は同一出願人の互いに類似する複数の意匠について登録する関連意匠制度、組物の意匠制度はセット物として使用される二以上の物品の組み合わせからなる意匠を登録する制度、秘密意匠制度は登録から最長3年間にわたって登録意匠の内容を公開しない制度、動的意匠制度は物品の形状や模様が変化する意匠について、変化の前後にわたる形状や模様を一出願で登録する制度です。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。