建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

知財ってなんだ? 第6回
商標登録の効果とは…「『自社ブランド』強化に不可欠」

いいね ツイート
0

 特許権、実用新案権、意匠権は、アイデアやデザインといった創作物を保護とするものです。これに対し、今回のテーマである商標権は、商品またはサービスについて使用するネーミングやマーク(商標)を保護するものです。

 商標権は商標登録することによって発生します。商標登録を受けるためには、使用する商品または役務(サービス)を指定しなければなりません。これを指定商品、指定役務といいます。商標権の効力は、その指定商品または指定役務について登録商標を独占的に使用することができるとともに、他人の使用を禁止する効力は、登録商標および指定商品または役務の類似範囲にまで及びます。

 商標登録を受ける場合も登録要件があります。まず、その商標が「識別力」を有することが必要です。識別力とは、他人の商品や役務と区別するための機能です。つまり、その商品の一般名称や慣用されている商標、商品の産地、品質、原材料、効能などを普通に用いられる方法で表示する商標には識別力がありません。このような商標に独占権を与えると、他人の経済活動に支障を来すことになるため、登録を受けることはできません。また、識別力はあっても、他人の登録商標と同一または類似する商標は登録を受けることができません。

 一般に商標といえば、文字、ロゴ、マーク、図形が多いのですが、日本で登録を受けることのできる商標にはさまざまなタイプがあります。その一つに、立体的形状があります。例えば、店頭に設置される宣伝用の人形の形状、飲料などの容器の形状、商品自体の形状も登録の対象になります。

 また、法改正によって、新たに五つのタイプの商標登録が認められるようになりました。例えば、CMなどに使われるサウンドロゴなどの「音の商標」、画面上で変化する文字や図形などの「動きの商標」、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色を特定した「色彩のみからなる商標」がそうです。文字や図形などを商品などに付す位置を特定した「位置商標」、見る角度によって変化して見える「ホログラム商標」もそうです。このようなタイプの商標は、既に諸外国では登録が認められていましたが、日本でも新たに商標の保護対象に加わったことで、ブランド保護のあり方が変わってくると思われます。

 商標は使用すればするほどブランド力が強くなり、商標としての価値が高まっていきます。その一方で、商標の顧客吸引力に便乗しようとする他人によって商標が模倣されるおそれもあります。このような模倣を排除し、自社ブランドを強化するためにも商標権は企業経営に不可欠な知的財産といえます。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。