建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

知財ってなんだ? 第9回
知的財産を守る手段とは…不正競争防止法よりも権利取得

いいね ツイート
0

 商品のブランドやデザインについて商標権や意匠権を取得していない場合、これらの知的財産を模倣から守る手段はないのでしょうか。そのような場合は不正競争防止法によって知的財産を守ることができます。

 不正競争防止法は、他人の商号、商標、商品形態などと類似または模倣した商品の販売、営業秘密の不正取得などの不正競争行為を取り締まるための法律です。模倣のような不正競争行為に対して差し止め請求、損害賠償請求などの法的措置をとることができます。主な不正競争行為は以下のとおりです。

 まず、「他人の商品等表示(商品・営業の表示)として周知性があるものを使用・販売し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為」が不正競争行為の一つとして規定されています。

 次に、「他人の商品等表示として著名なものを自己の商品等表示として使用する行為」も、不正競争行為として規定されています。例えば、(1)顧客吸引力や良質感にただ乗りする行為(フリーライド)(2)出所表示機能や良質感を希釈化する行為(3)良質感を汚染する行為―などがこの不正競争行為に該当します。

 また、他人の商品の形態の模倣(商品形態のデッドコピー)をする行為も不正競争行為として規定されています。ただし、最初の販売から3年以内の商品が対象となります。

 不正競争防止法は、営業秘密を不正に取得・利用する行為も規制しています。企業秘密として管理していた情報が不正に流出した場合には、その使用の差し止めや損害賠償を請求することができます。技術的なアイデア(発明)を保護する特許は、特許出願から1年6カ月で出願内容が公開されますが、製造方法の発明など、工場内で実施されるような発明は第三者による無断実施を発見するのが困難であり、特許取得によるメリットよりも、出願公開によるデメリットの方が大きいこともあります。このような場合、あえて特許出願をせず、ノウハウとして企業秘密にしておくこともありますが、その発明の技術情報が不正な行為により漏えいしたとしても、特許による保護を受けることができません。その場合、発明の技術情報が営業秘密に該当すれば、不正競争防止法による損害賠償などの法的救済を受けることができます。

 このように、不正競争防止法は、商標権、意匠権がない場合の最後のとりでとなり得ますが、保護を受けるためのハードルは商標権や意匠権を取得するよりも高いといえます。やはり自社の知的財産を守るためには、商標権や意匠権を取得すべきでしょう。

執筆者プロフィール

特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表 角田 成夫

角田 成夫
特許業務法人アテンダ国際特許事務所 代表
東京電機大学機械工学科卒。旧防衛施設庁建設部で自衛隊や在日米軍の機械設備設計、積算、現場監督などに携わった。その後、都内の特許事務所で知的財産関連業務に従事し、弁理士登録。2014年にアテンダ国際特許事務所を開設。