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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第2回 元請企業等による下請企業への指導

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 前回は行政の29年度以降における指導厳格化について触れましたが、今回は元請・下請関係からなる、現場での社会保険未加入関連の指導の変化と傾向について触れていきたいと思います。

 当初より未加入対策においては、元請・下請企業それぞれの役割や果たすべき責任が示されました。工事を請け負わせる企業(以下、元請企業等)にとって、その中で最も大きな課題となったのは、未加入の下請企業に対する加入指導の責任です。  

 そのための指針として策定された「下請指導ガイドライン」に基づいて、各元請企業等は指導を実施してきました。

 この指導の中身や程度は、現実には元請企業等の対応の方針の違いにより、現場によって大きな差があり、私が下請企業から相談を受ける際も、「元請A社は厳しいが、B社は全然そんなことはない」という趣旨の話はよく出ていました。また、同じ元請企業等からの仕事であっても、工事の発注者によってその厳格さに違いが生じる側面があるため、現場指導には混乱も見られました。

 29年度以降についてもそのような話は度々あり、この差異の構図自体は変わっていません。ただ、その差は縮小する傾向にあります。その要因は、多くの元請企業等が、未加入対策の期限である29年度を区切りとして、そこからの厳格化を選択したことに他なりません。つまり全体として厳格化の方向に集約しつつあるということです。

 このような傾向は元請・下請企業双方が対策期限をしっかりと意識した結果であり、そうなることは望ましい形ではあります。しかし一方で、下請企業への厳格化の周知が不十分であったり、その程度の面で極端に厳格化したケースも見受けられ、その結果、急激な変化にさらされた下請企業の負担が増し、反発が生じるという問題も起こっています。

 元請企業等としては、十分な指導はしていたという認識があるかもしれませんが、下請企業の捉え方とのギャップは大きいように思います。特に、下請指導の中身や方法に関しての社内検討が十分でないままに29年度を迎え、焦ったように指導だけが厳格化しているケースでは、この認識の差は大きくなりがちです。

 元請企業等の施工能力は下請企業あってこそ担保されますので、この認識の差を埋めることは重要なポイントです。よって元請企業等はその指導体制のあり方について検討する必要があります(次回に続く)。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。