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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第5回 「適切な」社会保険加入とは

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 元請企業等が実施する下請企業への保険加入指導を効果的なものにするためは、押さえるべきポイントがいくつかあります。私が重要だと考えるのは以下の三点です。

@「適切な保険加入」を正しく把握する(制度理解)
A現場入場する各下請企業の事業形態、及び各作業員の就業形態を把握し、それぞれに必要な保険加入を確認する(実態把握)
B「具体的」かつ「多面的」な指導・助言・サポートを行う(適正化)

 このポイントは、下請企業が自ら自社や、関係する作業員の保険加入について検討する際も同様です。では、まず@のポイントから具体的にみていきます。

 「適切な保険加入」という言葉は、社会保険未加入対策が後半に差し掛かった頃から、行政側の資料や指導において強調されるようになったものです。その背景には、今も残る現場での保険加入における混乱があります。

 未加入企業や未加入者においては、自身が加入すべき保険が正確に理解できておらず、本来加入すべき保険に加入していなかったり、また逆に、必要ない保険に加入しているケースが多く発生しました。

 このことは指導側である元請企業等の一部が、誤った内容の指導をしていることにも要因があります。元請企業等の指導レベルには現実的にはかなりの差が生じており、下請企業からすると、「A社とB社で言っていることが違う」ということがしばしば生じ、それが混乱に拍車を掛けています。
 
 図は「適切な保険」を示した国交省の資料です。未加入対策の初期から用いられている資料ですが、上記の実態を受け何度か改訂され、より分かりやすくなりました。

 こういった資料を参考に加入すべき保険を理解していきます。大きく分けると、@事業形態(法人や個人事業、一人親方等)A立場(代表者、家族従事者、労働者)B年齢 C労働時間 により加入すべき保険が決まりますので、これらの観点から整理すると良いでしょう。

 重要なのは、「社会保険加入」=「協会けんぽ・厚生年金・雇用保険」というイメージから脱却することです。この加入形態は多数派であることは確かですが、それが唯一の正解というわけではありません。パターンが多く、確かに煩雑ではありますが、その理解なしに適切な対応はできませんので、各社確実な制度理解に努めましょう。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。