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登記を極める フクダゼミナール
Lesson6 国有地の売却に中間省略登記は使えない?

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 今回からはゼミナールの読者の方から寄せられたご質問にお答えしていきましょう。

 まず、国有地の売却(入札)に新・中間省略登記は使えないのか、というご質問です。

 これは財務省(関東財務局)が作っている「国有財産の一般競争入札案内」に「中間省略登記はできません」という記載がある(9ページ「12・所有権の移転」)ことから生まれた疑問のようです。
 
〈できないのは「旧」中間省略登記〉
 結論から言いますと、関東財務局がいう「中間省略登記」とは「新・中間省略登記」のことではなく、Lesson3でご説明した、2005年以前の「旧」・中間省略登記のことなのです。

 「新」・中間省略登記は「旧」・中間省略登記の代替手段です。代替手段誕生の経緯などの詳細は省略させていただききますが、「代替手段」であるという点だけ頭の片隅に置いておいてください。

 05年以降「旧」中間省略登記はできなくなりましたから、「中間省略登記はできません」と書くのは当然のことなのです。

 一方「新・中間省略登記」は政府が承認しているものですから、これについて「できません」ということは、それこそ「できません」。

 政府の「承認」の意味についてもう少し詳しく説明しましょう。

〈新・中間省略登記承認は国の方針〉
 「新・中間省略登記」は第1次安倍内閣当時の規制改革会議による安陪総理大臣に対する答申によって推奨され、それを受けて安倍内閣が閣議決定をもって承認したものです(06年12月25日)。従いましてこの決定には国税である登録免許税を所管する財務省も地方税である不動産取得税を所管する総務省も従わなければなりません。

 確かに一見税収が減って国や地方は困るのではないかとも思えます。読者の方のご質問にも「国は税収を確保したいとの立場から『中間省略はやらない』という方針を採ったということなのでしょうか」とありました。

 しかしその様な判断はしなかったのです。答申の背景にはもっと大きな政策意図があるのです。それは、登録免許税や不動産取得税等の「流通税」の負担を減らすことによって不動産の流通が活性化し、ひいては経済全体が活性化するという考え方です。税収増も含め、経済の活性化によってもたらされる効果の方がはるかに大きいという判断なのです。

 これを規制改革会議の答申では「中間省略登記(または代替手段)による不動産流通課税の軽減は土地・住宅政策の観点から必要かつ有益なものである」という言い方で説明しています。現安倍政権流の言葉で言えば「中間省略登記」は「成長戦略」の一環であるということです。

〈規制改革会議は「旧」・中間省略登記も推奨〉
 ここで賢明な読者の方はお気づきになったと思いますが、答申では「新・中間省略登記」ではなく「中間省略登記」という言い方をしています。つまり、不動産登記法の原則として認められていない「旧」中間省略登記を認めるべきであるといっているのです。

 しかし、諸般の事情からこの時に承認されたのはここでいう「代替手段」すなわち新・中間省略登記の方だったのです。この点については機会があればご説明しましょう。

執筆者プロフィール

フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表 福田龍介

福田龍介
フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表
早稲田大学法学部卒業。1989年司法書士登録。大手司法書士事務所勤務を経て2002年、フクダリーガル コントラクツ &サービシス(FLC&S) を設立、開業、数々の不動産トラブルを未然に防ぐ。05年から「中間省略登記問題」に取り組み、06年末の規制改革・民間開放推進会議の答申にも関与した。新・中間省略登記の第一人者。