建滴 改正建築士法が成立 建築主にもていねいな周知を
2014/6/30
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書面による業務契約の締結義務化や管理建築士の責務の明確化など「設計・監理業務の適正化」を柱にした改正建築士法が、6月20日の参院本会議で可決・成立した。法案成立の過程では紆余(うよ)曲折があったが、議員立法での法制化を実現させたのは、日本建築士事務所協会連合会(日事連)、日本建築士会連合会、日本建築家協会(JIA)が小異を捨てて、大同についたからだろう。
もともと、日事連は士法改正での法制化ではなく、「『資格者法』の建築士法と『業法』の建築士事務所法の両輪体制の確立」を主張。現行士法の第6章にある建築士事務所の条項を分離し、その条項と追加で法制化する10項目の事項とで構成する新法の必要性を訴えていた。
3会は、それぞれ当初の方針からの転換を余儀なくされたわけだが、日事連の三栖邦博前会長は法案成立後に「達成度は100%だ」という認識を示した。
その反応からは、業法の確立という「名」よりも、法整備によって建築設計・工事監理業に携わる人々に強い自信と誇りを与えるという「実」を取った、強い意志を感じることができる。建築設計界全体で問題解決の糸口を見付けようという大局的な取り組みは、称賛に値する。
今回の改正点は、▽書面による業務契約の締結義務化(延床面積300平方b超)▽一括再委託の禁止(延床面積300平方b超)▽適正な代価での契約締結の努力義務化(国土交通大臣の定める報酬規準に準拠)▽建築主の求めに応じた免許証提示の義務化▽管理建築士の責務の明確化―など多岐にわたる。
今後、法案成立日から換算して1年以内に施行される。改正法の実効性を高めるためには、早急に取り組まなければならない課題が少なくない。
特に、建築設計事務所の業務上、避けて通れない「書面による業務契約の締結義務化」については、多くの中小規模の工務店が混乱する恐れがある。3会が中心になって、契約書の統一化・簡素化による負担軽減、移行への経過措置期間の十分な確保など、混乱を最小限に抑える方策を練るべきだ。全ての建築設計に携わる人々は無論のこと、建築主(エンドユーザー)にも改正法の内容が理解できるよう、丁寧な周知・啓発活動を急ぎ、展開するべきだ。
過去には「3極構造」と揶揄(やゆ)されたこともある建築3会が歩調を合わせたことを、「事件」と例える関係者もいたほどだ。それだけに、法改正までの道のりは平坦なものではなかったが、幸いにも「安全・安心で良質な建築物を整備できる環境を創出する」というベクトルは同じだった。
3会が汗をかき、産み出した成果を無にしてはならない。法改正を契機に、全ての建築士が設計・監理を通じて国民の信頼と負託に応える存在であり続けたい。
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