債務負担で柔軟な工期設定を
2014/7/14
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消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や消費の落ち込みによる景気の下振れリスクを回避するため、政府は2013年度補正予算と14年度当初予算の早期執行を図る方針を掲げ、執行目標を設けた。顕在化した建設投資と労働力の需給ギャップを考えた時、計画的な予算執行の重要性はさらに高まっている。
昨年2月に成立した12年度補正予算の成立時、政府は予算執行の大幅な前倒しを各省庁に指示した。発注の前倒しは、消費増税による駆け込み需要が最盛期を迎えた時期と重なった。12年度補正が約5兆円と大型だったこともあり、この予算執行の前倒しが人手不足を招き、入札不調や資材価格の高騰を招く一因になったとも言える。
国土交通省は、公共工事設計労務単価の引き上げをはじめとする予定価格の積み増し、発注ロットの大型化などの施工確保対策を講じるよう各発注者に求めたため、年度末までに最終的に契約に至った工事は大半を占めた。
ただ、入札手続きが遅れたために工事を年度末までに完成できなかった工事もある。このため、財政法に基づく「繰り越し制度」を活用して14年度に繰り越された予算も少なくない。財務省は、通常は異常気象や工事中の事故のケースなどにしか適用しない「事故繰り越し」に柔軟に応じる姿勢を示し、自治体発注の公共工事などもこの手続きを踏んで、14年度に予算を繰り越すものが多かった。
一方、公共工事を発注しようとした場合、より柔軟な工期設定を可能にするのが「国庫債務負担行為」だ。債務負担行為は繰り越し制度とは異なり、事前に議決を受けて次年度以降(原則5年以内)に効力が継続する債務を負担する。
債務負担行為を活用し、公共工事の発注時期を平準化してほしい、という声は建設業界にも以前から根強く、実際にこの声に応じている自治体も一部にはある。国交省も14年度予算から国庫債務負担行為を拡充し、対象に直轄道路修繕事業のボックスカルバート修繕や点検業務を追加、同事業でこれまで最長2年しか認めていなかった債務負担行為の期間を5年に延長した。
さらにこうした考え方を広げようという動きもある。6月に同省の建設産業活性化会議がまとめた中間報告では「債務負担行為を有効活用し、施工時期を平準化する」との方向性が示された。改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)の理念を発注者に浸透させる運用指針にも、一定期間を越える工事に債務負担行為を活用するとの方針が盛り込まれる見通しだ。
建設市場に需給ギャップが生じている今、公共工事の発注者には、柔軟な工期設定を可能にして、限られた労働力を効率的に活用することが求められている。予算の単年度主義の原則を補完する債務負担行為をこの機に拡充し、今後も生じる可能性がある需給の波に対応できる体制を整えておきたい。
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