適正な競争環境の整備を
2014/7/28
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梅雨が明けた途端にうだるような猛暑の到来だ。高温で多湿な屋外での労働は過酷を極める。この炎暑の中、施工現場の仮囲いの傍らで、交差点で、そしてロードコーンの脇で、フリッカーを手に交通誘導する警備員の姿を見ることも珍しくない。熱中症などへの対策は万全を期していると思うが、交通誘導警備員の健康状態や安全衛生への細やかな配慮が最も必要な時期を迎えた。
交通誘導警備は、警備業法第2条により2号業務として位置付けられ、1号、3号、4号の業務内容とは一線を画す。日本の警備員のおよそ4割がこの交通誘導警備に従事しているといわれる反面、他業務の警備員に比べ、労働条件がよいとは言い難い。非正規社員が多い現状も否定できない。このような就労環境の悪さが、定着率の低さや労働意欲の低下を招く一因であるとの指摘もある。
警備業の中でも、交通誘導警備員を抱える警備会社は中小が大半を占めている。そして、目下の課題は社会保険未加入への対応である。全国警備業協会は法定福利費を明示した標準見積書を作成するなど対応を急ぎ、都道府県協会は研修会を通じて社会保険への加入を呼び掛けている。これらの取り組みの狙いは、適切な警備料金の確保、警備員の賃金上昇や処遇改善、悪質な安値受注の防止にある。
警備業は警察庁の所管である。国土交通省によると警備業は、社会保険の加入促進に向けた下請け指導や立ち入り検査の対象ではないようだ。また施工体制台帳や再下請通知書への記載についても義務付けていないという。ただし、公共工事の予定価格は警備料金も含めて算出するため、公共工事設計労務単価には交通誘導警備員の単価が提示されている。この単価には法定福利費の本人と事業主の負担分が含まれていることから、社会保険への加入は当然ということにる。
国土交通省は8月1日から、直轄工事の元請けと一次下請けから社会保険未加入企業を排除することを決めている。この流れは直轄工事だけにとどまらず、地方公共団体や民間事業者にも及んでいる。中央省庁は2015年度以降、競争参加資格者名簿の登載を加入企業のみに限定することも決めた。これらの状況から、所管官庁がどこであれ、建設業と共に働く現場で、警備業だけ未加入が許されるとは考えづらい。
交通誘導業務の警備料金は上昇傾向にあるようだ。しかし、警備員の担い手不足は深刻さを増している。事業領域の拡大による付加価値経営、新サービスによる業容の拡大など、他社との差別化を徹底することにより起きる淘汰の波を避けてはならない。
検定資格者数によるランク付け、資格者配置基準の強化など、自ら適正な競争環境を整備する方向を模索することを提案したい。新規性の高い取り組みにも期待したい。魅力ある産業に変わらなければ未来は描けない。
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