災害にどう立ち向かうのか
2014/9/1
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ことしも9月1日の「防災の日」がやってきた。大規模な地震や風水害などを想定し、発災時の対処を確認・充実するため、行政などによる防災訓練が各地で実施される。
防災の日が創設されたのは54年前の1960年。前年の伊勢湾台風の被害を受け、当時の内閣が閣議了解して決まった。9月1日が関東大震災(23年)の発生日であり、台風襲来の厄日といわれる旧暦の雑節「二百十日」(立春から数えて210日目)に当たることも理由だという。
創設に当たり、旧総理府が60年9月1日付の官報に登載した記述が興味深い。
原文を引用しながら紹介すると、創設の狙いは「政府、地方公共団体など関係諸機関はもとより、広く国民の一人々々が台風、高潮、津波、地震などの災害について、認識を深め、これに対処する心がまえを準備」することにある。そして、災害の未然防止や被害を最少限に止める方法を「みんなが各人の持場で、家庭で、職場で考え、そのための活動をする日」と定義している。
さらに「防災対策は、治山治水をはじめ海岸の保全、交通施設の防災事業、都市計画などの建設事業にまつところが大きい。また、災害復旧事業をすみやかに完成することもたいせつである」と公共事業の重要性に言及。一方で「長年の努力で完成した堤防が被害を阻止した例もあるが、一人の機転によって多数の人命が助かった例も多い」と指摘する。
その上で「人間の自然の暴威との戦いは、大規模な国土保全の建設事業から各家庭の日常の火の用心まで、いわば、社会のあらゆる方面の力を結集した戦いである」として、国を挙げた取り組みを呼び掛けている。
日本は防災の日の創設以降も、度重なる災害に見舞われてきた。過去の被害を教訓に基準やインフラ整備のレベルを高めてきたとはいえ、その想定を上回る規模の災害に翻弄され続けている。開発の拡大や地球温暖化の影響といった状況の変化も考えれば、災害の起こる危険性はむしろ、半世紀前より高まっているのではないか。
であれば、行政はインフラの整備などで防ごうとする災害のレベルを明確にした上で、そのレベルを超えた事象への対処を国民自らが考え行動できるような、分かりやすいデータを示すべきだ。
例えば、整備の進捗や未実施の箇所なども落とし込んでハザードマップを作り、逐次更新して公開すれば、住民らは避難のタイミングや経路などをイメージしやすい。防災訓練はより実戦に則したシナリオが設定できるだろうし、被災現場へ真っ先に駆けつける地域建設業の的確な判断を促すことにもつながる。
8月20日に土砂災害が発生した広島市では、行方不明者の救助と復旧に向けた懸命の作業が続いている。本格的な台風シーズンはこれからだ。首都直下地震や南海トラフ地震による巨大津波などの発生も懸念されている。
今後も不可避とされる災害に行政、業界、国民一人一人はどのように備え、行動すべきか。防災の日を機に、社会のあらゆる力を結集して災害に立ち向かう術を、あらためて考える必要がある。
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