保険未加入業者の入札参加排除へ―都
2014/10/6
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公共工事品質確保促進法の改正(改正品確法)に基づく担い手の育成・確保に対する取り組みの一環として、東京都が社会保険未加入業者を都発注工事から排除する方針を打ち出した。2年後に予定する2017・18年度の「建設工事等競争入札参加資格審査」の際、社会保険への加入を必須条件とし、入札参加の“入り口”で未加入業者をブロックする格好だ。
社会保険未加入対策をめぐっては、国土交通省が8月1日以降に入札公告する直轄工事で、未加入の元請けと1次下請け(下請代金総額3000万円以上)の排除を開始。自治体をはじめとする発注機関に対して同様の取り組みを要請した。
都は改正品確法の趣旨や、8月に開いた建設関係団体との意見交換での要望なども踏まえ対応策を検討。直轄工事に比べて中小建設業者の受注する小規模な工事の割合が多い状況から「保険未加入業者をすぐに排除すれば廃業などにつながり、技術を持ったベテランの担い手を失う事にもなりかねない」(都財政局)との懸念もあるとして、周知や啓発に一定の期間が必要と判断。国が許可業者の社会保険加入率100%達成の目標時期を17年度に設定していることも踏まえ、発注者の責任として「2年後の資格審査時をめどに社会保険等の加入を必須条件とする方向で対応を検討していく」との考えを都議会で示した。
都は有資格者の保険加入状況を把握しているものの、その数などは明らかにしていない。ただ、工種によって偏りがあり、8000者を超える有資格者全体の数%が未加入だという。まず周知用のリーフレットを作成し、契約窓口の職員らが問い合わせに対応できるようにした上で、約2年の猶予期間中に保険加入を促す。
下請け業者の排除については「工事量が膨大なため下請けの加入状況まで職員が確認するのは物理的に不可能」との判断から実施せず、元請け業者に保険加入の指導を求めていく考えだ。
老朽化した都市基盤の更新、五輪開催に備えた競技施設や関連施設の整備を控え、入札の不調・不落が多発している都にとって、技術者・技能者の不足は大きな課題だ。改正品確法に基づく具体的な取り組みを現段階で明確にしたことは大きな意味がある。
しかし、国交省は、過去の工事実績要件の緩和など若手技術者に考慮した競争参加資格の設定や、ダンピング対策としての予定価格の事後公表なども求めており、入札契約の過程で見直すべき点は少なくない。保険未加入業者の入札からの排除を皮切りに、担い手の育成・確保につながる、次なる施策を早急に打ち出す必要がある。
区市町村も都に追随することが予想される。受注者にとっても、行政の保険未加入対策を一つのきっかけに、担い手をどのように確保し、育成していくのかを戦略的に考え、実行していかなければならない。若年労働者を確保し技術・技能を継承するために残された時間は決して多くない。
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