地方創生とコンパクトシティ 大きい不動産・建設業界の役割
2014/10/20 神奈川版 掲載記事より
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日本は本格的な人口減少時代に突入した。国土交通省の推計では、国土を1キロ四方ごとに細分化すると、三十数年後には6割以上の地点で人口が半分以下に減少する。また、高齢人口の割合は今後急速にピークを迎える。人口急減と超高齢化は、わが国が直面する大きな課題だ。さらに、総務省の人口移動報告を見ると、就学や就業を機に地方圏から大都市圏へ移り住む人の流れは変わらず、特に東京圏に集中する傾向は年々高まり、地方圏では人口減少に直面している市町村が多い。
人口急減・超高齢化の時代では、社会の資本や保障に掛かるコストを抑える観点から、行政や医療に教育、日用品の買い物に至るまで、住民が各種のサービスを効率よく受けられるようにすることが重要だ。役所や病院、福祉施設、学校、住宅などの都市機能を、利便性のよい中心部に集積させるコンパクトな街づくりが求められている。
すでに、市街地再開発事業で複合用途の建築物を町中に供給し、職と住を創出することで、中心部に定住型の就業者を増やす取り組みが各地で進んでいる。こうした動きを地方の主要都市で加速させ、他の圏域に比べて相対的に出生率の低い東京圏への人口移動を抑えることが、地方創生につながるような気がする。
政府は、開会中の第187回国会を「地方創生国会」と位置付け、「まち・ひと・しごと創生法案」を提出した。法案は東京圏への人口集中を是正して、地域ごとに住みよい環境を確保し、将来にわたり活力ある日本社会を維持することを目的にしている。
今月10日には、内閣に設置された創生本部が、50年後に約1億人の人口を維持することを目指す「長期ビジョン」と、今後5カ年の政府の施策の方向性を示した「総合戦略」の論点をまとめた。それによると、地方へ移り住みたい人に対する支援や企業の地方移転など新しい人の流れをつくり、地方の拠点となる都市に地域のインフラとサービスを集約する取り組みを進めるという。
人の流れを変え、地域を活性化させる上で、地域に住む人々の暮らしを支える不動産・建設業界が担う役割は小さくないし、すでに具体的に動き始めた企業もある。例えば穴吹工務店(香川県)は、本社に隣接した土地にサービス付き高齢者住宅(サ高住)を建てる。来秋完成するこの物件を皮切りに、当面は西日本を中心にサ高住を展開し、供給に際しては地域の高齢化率のほか、同社がかつて建てたマンションからの住み替え需要も考慮しながら用地を選定するという。こうした町中居住を促進するような取り組みを、小さな規模からでも確実に広げていきたいものだ。
創生本部は総合戦略を年内に公表する予定だ。都道府県や市町村は、この総合戦略を踏まえて地域の実情に即した独自の戦略を練ることになる。各地域それぞれの地方創生に向け、コンパクトな街づくりに官民が連携し取り組むことが大切だ。地域に根差した産業の一つである不動産・建設業が果たす役割は大きい。地域活性化につながる多様なニーズを掘り起こし、地方創生のトップランナーになることを期待したい。
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