次に国交省が関与すべきこと
2014/10/27
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解体工事の技術者に求められる技術力・マネジメント能力とは何か―。人口減少と少子高齢化が進行するこの国は、都市や産業インフラもパラダイムシフトのただ中にある。膨大なストックの更新の一翼を担う業への期待は大きく、責任もまた重い。
通常国会で改正建設業法が成立したことを受けて、国土交通省は、来夏までに解体工事における技術者制度を固めようと「解体工事の適正な施工確保に関する検討会」(座長・嘉納成男早稲田大学教授)を設置。関係団体などからのヒアリングを行うなど調査・検討を進めている。
検討会は、議論を始めるに際して、解体工事が抱える課題として▽一般の歩行者らを巻き込む公衆災害の発生▽建設廃棄物対策▽騒音・振動対策▽アスベスト(石綿)対策―などを挙げている。どれも解体工事業が社会的な責任を果たす上で、真摯(しんし)に向き合わなければならない重要課題ばかりだ。だが、いまこの時点に限って言えば、特に注視したいのは国交省が解体工事とアスベスト対策の関係性をどこまで理解し、建設業法の守備範囲でどこまで関与する姿勢を見せるのか、という点だ。
なぜなら、それは最高裁判所が10月9日に判決を下した泉南アスベスト訴訟の上告審で、国が1958年時点で局所排気装置の設置を義務付けなかったことは「国の規制権限の不行使(不作為)」に当たるとして、国家賠償法1条1項に違反すると認定。アスベストによる人への健康被害について、初めて国の責任を認めたからだ。
たしかに「規制権限の不行使」が国家賠償法上、違法とされるか否かは、その権限を定めた法令の趣旨や目的、その権限の性質などに照らして判断されることであり、現に最高裁は「71年以降、国が行った規制の違法」については認めていない。
いわゆる「屋外型アスベスト訴訟」と呼ばれ、建設業の元労働者やその遺族などを原告として全国の8裁判所で係属中の建設集団アスベスト訴訟とも争点は異なり、安易に国の不作為を論じることはできない。
それでも、国は、現行の法制度によって「規制権限」を行使できているのか否か、予断を持つことなく、いま一度点検、精査する必要がありそうだ。特にアスベスト対策の担い手でもある建設業者を監督・指導する立場にある国土交通省には、最高裁がその所在を示した「社会の要請」を、鋭敏に、そして的確にくみ取る感性が求められているように思えてならない。
アスベスト対策は、精確な調査と精度の高い分析、ばく露しない・させない適切な管理、そして、安心・安全な除去―の三つを担保できてこそ、初めて成るものだ。
国交省は、建築物における石綿含有建材調査の精確さを担保しようと「建築物石綿含有建材調査者制度」を創設し、調査者の育成に取り組み始めた。次に国交省が関与すべきは「建設工事の企画から完成までの過程」と「通常使用常態にある建築物」でのアスベストばく露の防止であり、そのための「規制権限」を行使することではないだろうか。
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