建滴 地方創生と住宅整備 問われるデベの提案能力
2014/12/1
印刷 | |
衆議院が解散した11月21日、国会では人口減対策の基本理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」など、地方創生関連2法が駆け込みで可決・成立した。地方圏が抱える人口急減や超高齢化といった問題に歯止めを掛け、「東京一極集中」を是正することを目的としている。政府は、地方経済の縮小・停滞打破を目指した施策を展開するとしているが、決して一時的な選挙対策、景気対策で終わらせてはならない。国民一人ひとりが危機感を共有し、人口減少社会における地方のまちづくりの在り方を、真剣に考える契機としたいものだ。
政府の描く大まかな「地方創生の筋書き」は、企業の本社機能移転に対する税制優遇や地方への移住希望者に対する支援策を講じ、拠点都市に地域のインフラやサービスを集約させようというもの。政府は衆院選後にも、今後5年間の具体的計画である総合戦略を策定する予定だ。
しかし、そう簡単に事は運びそうにない。行く手を阻む要因の一つに、大都市圏と地方圏との経済・資産格差がある。地方圏には人口30万人に満たない自治体が多く、高齢化や人口減などの問題が、地価や地域経済に直接的に悪影響を及ぼしている。
地方では、ターミナル駅からそう遠くない場所でも、商店街の「シャッター通り化」や放置された空き家が見受けられる。よほどの好条件がそろわなければ、企業はこのような地方都市に、拠点や研究機関などを設けようと積極的には考えないであろう。
人と企業を同時に呼び込む、従来型の手法は通じそうにない。まず、若者やリタイアした定年退職者など、多くの移住者の受け入れが可能な住宅やサービス施設などの「器」の整備により比重を置くべきだろう。
もちろん、多くの人が「ぜひ移住したい」と思うようなまちづくりの答えは、簡単に導き出せるものではない。自治体や住民と一緒に、地域の実情を熟知した建設業や不動産企業が知恵を絞り、定住人口の増加に向けた仕掛けを考えるべきだ。
大手・中堅デベロッパーも、地方に活路を見出そうとしている。建築コストの高騰や地価の上昇など、大都市圏での市場環境を踏まえ、地方都市に支店や営業所などを開設する動きが出つつある。
ただ、人口規模が大きい首都圏などでの実績や開発手法が、地方部で適合するとは限らない。気象条件や交通手段、労働環境など地方で暮らす人々の実情は東京の住まい方とは大きく異なる。デベロッパーがこれまでに培ってきたノウハウと、地方のニーズをベストミックスさせることが、移住者を含めた全ての人が安心して暮らすことのできる「まちの強靭(きょうじん)化」につながる。
地方の土地に新たな価値を創出し、新しい人の流れを生み出すためには、道路網などインフラの強靭化だけでは足りない。デベロッパーや建設企業には、「創生の主役」である地方に暮らす人々に寄り添い、地方の目線に立ったまちづくり・住まい空間づくりの提案能力が求められる。
関連記事
- 春の叙勲 国交省関係は282人 (4/29)
- 春の褒章 国交省関係は58人・2団体 (4/28)
- 労働者と同一現場に従事 注文者が一人親方保護 (4/26)
- 日建連 宮本会長「会員挙げて適正工期確保」 (4/26)
- 3月のセメント国内販売14・2%減 (4/26)
- 建設業は不調改善 3月の小企業動向 (4/26)
- 都市鉄道整備の促進策 周辺開発者の負担検討へ (4/26)
- CCUSステッカー 一般公募14作品を選定 (4/26)
- 国土強靱化 中期計画の早期策定要望 (4/26)
- 1・6%減の3728万d 23度のセメント国内需要 (4/25)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。