地域建設業の雇用改善 自治体を能動的にさせる提案を
2014/12/8
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総務省が発表した10月の労働力調査で、建設業の就業者数が前年同月比で14万人増え、524万人になった。3月以降、建設業の就業者数は前年同月と同数だった9月を除き、前年同月を上回る状況が続いている。建設投資の増加に伴って現場の人手を確保する動きが統計に表れたとみられるが、ここで問われるのは新規入職者の定着だろう。
東日本大震災後の3年にわたり、建設業の技能労働者数は増加傾向にあるが、長期的にみれば、依然、減少傾向にあると考えてほぼ間違いない。建設経済研究所は、2025年の建設業の技能労働者が、楽観的に見ても10年比で15・3%減、悲観的に見ると47%減になると推計している。
公共工事の発注者に「中長期的な担い手の確保・育成への配慮」を求めた改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)の効果を待つだけではなく、当事者意識を持ち、建設業界全体でこの問題に立ち向かうことが求められる。とは言え、長期にわたる建設投資の減少で特に中小の建設業は疲弊している。さまざまな面で行政の支援は欠かせない。
建設業の雇用に対する公的な支援策の一例となるのが、厚生労働省が2013年度補正予算で創設した「地域人づくり事業」だろう。この事業は、都道府県が造成する基金に同省が予算を積み増し、都道府県が主体となって失業者の就職、企業の処遇改善を支援するもの。都道府県は、事業を民間企業や団体などに委託して事業を実施する。
40都道府県が91事業(11月末時点)の実施をすでに決定するなど、建設分野における同事業の活用が全国に浸透してきている。建設分野の予算総額は約42億円に上る。各地域の建設業団体などが事業を受託し、就職相談会を開いたり、期間雇用した従業員の賃金を助成している。
この事業では、すでに雇用している従業員に対する企業の処遇改善もサポートする。事業を受託した社会保険労務士が雇用管理をアドバイスするための企業訪問を行ったり、社会保険加入を促進するための相談窓口を開設したりできる。在職している若手技術者・技能者に技能訓練や資格取得を支援する事業もある。
岐阜県から事業を受託した岐阜県建設業協会などでつくる共同体は、この事業で31人(11月1日時点)の新規雇用を実現した。全産業に人手不足感が広がっている中で、当初の計画通りに雇用が進んでいない地方もあるようだが、同事業は、建設業の担い手確保に一定の効果を挙げつつある。
ただ、この地域人づくり事業は、都道府県が14年度末までに事業に着手し、15年度中に完了することが決まっている。財政制約のある中、予算編成はますます難しくなる一方だが、行政には建設業が担い手の確保と育成、定着に取り組めるよう、柔軟な支援策を継続的に講じてもらいたい。
地域人づくり事業に限らず、地域の建設業の実態を最も分かっているのは地域の建設業者自身。自らの経営環境の改善や雇用の安定にとって何が最も有効なのか、現場目線で考えたことを積極的に提案し、自治体を能動的にさせる努力を惜しまないでほしい。
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