受注環境の整備はオール東京で
2014/12/22
印刷 | |
工事繁忙期を迎え年度末までに発注する工事をどう受注してもらうか。不調・不落対策を進める東京都による新たな取り組みが始まった。
財務局は「一括公表複数希望方式」の試行範囲を拡大した。2014年度中の発注を予定している予定価格9億円以下の工事のうち、短期間に集中して契約手続きを進める案件を工種ごとに一括して「入札情報サービス」で公表し、これまで制限していた連続する週や複数案件の競争参加への条件を緩和した。受注者が技術者の配置状況などに応じて“受注計画”を立てやすくすることが目的だ。橋梁耐震補強工事5件を皮切りに建築工事54件の発注予定を公表し、公告の予定日や参加希望の受け付け期間、単体かJVかの受注形態といった内容を掲示している。
下水道局でも、今後発注を予定する枝線再構築工事の内容や諸経費率割り増し(大都市補正)の適用の有無などについて公表を開始。同局では同種工事の開札日を分散させ、複数案件に申し込んだ業者が開札結果を確認した上で、他案件への応札を検討できるようにした。
さらに、標準的な積算金額と実勢価格とのかい離を防ぐため、都心区の枝線再構築工事を対象に実施している間接工事費の割り増しに加え、今後発注を予定する工事の全体像を「見える化」した。15年度当初までの公表案件を週ごとに明示し「技術者の拘束期間が長い」などを理由に応札者が減っている大都市の下水道工事への入札参加を促している。
工事が集中する年末から年度末にかけては、ますます技術者が足りず、新たな工事の受注機会は少なくなる。五輪関連のインフラ整備や民間需要の拡大により、限られた技術者をより利益率の高い工事に配置しようと競争参加者の“選別”が進む中で、不調・不落は必然的に増える。
都もこうした状況を把握した上で、発注予定情報をより詳細に提供し、足かせとなっている応札可能件数の制限などを緩和することで、入札に参加しやすい環境を整えようとしている。
ではこうした取り組みの効果は期待できるようなものなのか。大手総合工事業者、地元中小建設業者ともに一定の評価を与える一方で、「都だけの取り組みでは効果が限られる」と口をそろえて指摘する。大手業者は国や他県でも、地元業者は区や市の入札にも参加している。軸足はそれぞれ違い、都だけの工事に参加しているわけではない。手持ちの技術者・技能者の配置状況を踏まえて受注計画を練るにしても、都の情報だけでは足りない。不調・不落は全ての発注者が抱える喫緊の課題だ。五輪、そして五輪後を見据えた社会基盤整備を着実に進めていくのであれば、発注者側は「オール東京」あるいは「オールジャパン」で情報開示の足並みをそろえていかなければならないだろう。
もちろん、受注者側も「将来展望が描けない」と人手不足を嘆くだけでは事業の継承・発展は見込めない。短期的な受注だけでなく、中長期の事業計画を明確にし、人材の確保・育成を着実に進めていかなければならない。
関連記事
- 春の叙勲 国交省関係は282人 (4/29)
- 春の褒章 国交省関係は58人・2団体 (4/28)
- 労働者と同一現場に従事 注文者が一人親方保護 (4/26)
- 日建連 宮本会長「会員挙げて適正工期確保」 (4/26)
- 3月のセメント国内販売14・2%減 (4/26)
- 建設業は不調改善 3月の小企業動向 (4/26)
- 都市鉄道整備の促進策 周辺開発者の負担検討へ (4/26)
- CCUSステッカー 一般公募14作品を選定 (4/26)
- 国土強靱化 中期計画の早期策定要望 (4/26)
- 1・6%減の3728万d 23度のセメント国内需要 (4/25)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。