建滴 受発注者の緊密な連携を 民間建設の品質確保
2016/7/23
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マイホームは個人にとって一生で最も高額な買い物である。家計をやり繰りし、苦労して頭金を積み立て、何度も展示場に足を運び、家族で話し合い、やっと手に入れたマイホーム。そんなマイホームに重大な瑕疵が発見される。購入者の精神的な苦悩は深く、社会的影響は大きい。建設業や不動産業にとっても、瑕疵への補償をはじめ、業界に対する国民の信頼の喪失など問題は深刻だ。
民間の建設工事をめぐるそんな問題に関して国土交通省が7月14日、民間工事の適正な品質を確保するための指針を発表した。基礎杭工事問題で明らかになった建設業の構造的課題への対策を検討してきた中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が策定を求めていたものだ。
この指針のポイントは、現場の地中の状況や近隣への対策など、工事の開始時点では想定できない施工上の問題やリスクに関して、民間企業である工事の発注者と受注者など関係者があらかじめ十分に調査や協議を行うところにある。リスクに伴って発生する費用の受注者の一方的な負担や、下請けへのしわ寄せを防ぐと同時に、建設工事に対する消費者や利用者の信頼を確保し、安心して住宅を購入したり、施設を利用したりできる環境を整える。
関係者がリスクに関して共通の認識を持ち、工事の条件や契約内容を決めていくという点では、対等な立場での受発注者の契約締結を基本原則とする建設業法の趣旨を補完するのが指針の狙いだとみることもできる。
指針はまず、事前調査の重要性を強調する。そして事前協議の対象として、地中関連や設計関連、資材関連、周辺環境、天災、法定手続きなどで12の協議項目を挙げた。
このうち指針が「特に留意が必要な項目」と指摘しているのが地中関連と設計関連だ。
地中関連では、発注者に対して、公的機関の地盤データベースなども活用して調査し、特に急傾斜の地層や支持層の不陸が著しい状況が明らかとなった場合、関係者間で情報共有し、追加調査の必要性などを、専門的な知見も活用して判断すべきだとしている。さらに、想定できなかったリスクが発現した場合のリスク負担の考え方について、あらかじめ協議しておくことが必要だと指摘している。
日本建設業連合会の中村満義会長は7月14日、今回の指針に関して、「意義を真摯(しんし)に受け止め、受発注者間の適切なリスク負担の在り方に沿った契約条件の確保と請負契約の適正化を通じて、民間建設の品質確保に努める」とコメントを出した。
また、不動産協会の木村惠司理事長は7月15日にあった記者懇談会で今回の指針に触れ、「発注者・設計者・施工者がお互いを貴重なパートナーとして考え、品質確保のために共通の認識を持って積極的に関与する関係が必要。消費者の不利益につながらないよう。事前準備や施工の段階から引き渡しにいたるまで協力していかなければならない」と話した。
消費者の利益と、業界の信頼の回復と構築に向けて、受発注者の緊密な連携づくりに踏み出していかなければならない。
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