建滴 頻発する自然災害への備え
2016/8/1
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広島土砂災害に関東・東北豪雨、熊本地震―。大規模な自然災害が頻発している。防災は言うまでもないが、災害発生後に被害を最小限に抑えるための取り組みも重要だ。ただ、人材や技術力の不足といった課題を抱えているのは建設業だけでなく、市町村など地方公共団体も同様だ。首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの発生が切迫していると言われている中で、救命・救援、応急復旧の前線基地となる地方公共団体を機能させる手だてを急ぎ講じなければならない。
緊縮財政や行政改革によって、地方公共団体の土木関係職員数は減少傾向にある。村に至っては、全国で約半数が技術職員を抱えていない。インフラの維持管理や災害対応に必要な技術力、経験の蓄積・継承は風前のともしびだ。
しかし、自然はこうした事情にかまうことなく猛威を振るう。そして、その都度、地方公共団体が抱える課題を浮き彫りにしてきた。被災直後に被災状況を俯瞰(ふかん)的に把握する手段が乏しいこと。そして、調査・応急復旧の技術力を持つ職員が限られていることなどがそうだ。
復旧工事に移行する段階になってもなお、マンパワー不足という問題が立ちふさがる。迅速に対応しようにも、発注や監督・検査などが思うように進まないというのだ。さらに、県による市町村支援が円滑に進まない事例も明らかにされている。
その一つに、2014年11月の長野県神城断層地震で長野県職員による支援が遅れたケースがある。管内の県管理施設も被災していたことから、県側の人員調整に時間が掛かり、職員を被災市町村に派遣するまで、災害発生日から10日を要したというのだ。
県と市町村との関係ではこれとは別の問題もある。昨年9月の関東・東北豪雨では、福島県南会津町で県と町が建設業者を取り合うという事態が発生した。主要道路や河川の決壊箇所を優先したことから、町が管理する公共土木施設の応急工事の着手が遅れた。
民間事業者の確保については、災害協定の活用も課題となっている。都道府県はともかく、市町村単位での締結状況は心もとない。協定を締結しているのは全国市町村の1割にも満たないのが現状だ。長野県神城断層地震の際には、被災地2村が協定を締結しておらず、被災後に県を通じてコンサルタント業者を手配したことが、初動の遅れにつながったと言われている。
国土交通省では、こうした事態を「人員」「経験」「技術力」の不足によるものと捉え、有識者会議による検討をスタートさせた。市町村が災害発生から復旧に至るまで迅速、そして的確に対応できるよう、支援方策の在り方を検討するためだ。
支援の在り方としては、自治体間の連携や災害協定の締結を促したり、衛星画像やドローン(UAV)をはじめとするICT(情報通信技術)の活用が挙げられる。国による支援の強化も必要だ。疲弊しているのは、業界だけではない。行政もまた同様だ。地域のさまざまなステークホルダーが知恵や経験を持ち寄って、最善の仕組みを創り出したい。
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