元下協議など早期対応を インボイス制度
2022/8/22
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インボイス制度のスタートまで1年余りとなった。元請け・下請けによる分業で成り立つ建設産業にとって、その影響は小さくない。対応の遅れは、元下間の取引関係を揺るがし、ひいては建設産業全体の不利益にもつながるだろう。制度の周知や関係者による協議などを着実に進めたい。
元請けから「契約を切られる」「取引価格を減額される」といった下請けの懸念も聞かれる。2023年10月に制度がスタートすると、年間売上1000万円以下の免税事業者を下請けにする上位企業は、納めなければならない消費税額が増えてしまう。インボイス(適格請求書)を発行できない下請けに、元請けが厳しい対応を取る可能性もある。
問題となるのは「インボイスを発行できるのは課税事業者だけ」という点だ。建設業には数十万人の一人親方が存在する。こうした一人親方をはじめ、消費税の負担を免除されている免税事業者も多い。これらの事業者には「免税事業者を継続する」か、「課税事業者となってインボイスを発行する」かの選択が迫られる。課税事業者になれば、消費税を支払わなくてはならい。元請けから消費税分の上乗せなどを得られるかどうかは交渉次第だ。
建設業界団体なども説明会や資料配布などによる周知を進めているが、いまだ業界の動きは鈍いようだ。
全国建設労働組合総連合(全建総連)が一人親方に行った調査では、インボイス制度を「大体知っている」は約3割にとどまり、「知らない」が24%あった。元請けから課税事業者になるよう求められる可能性についても40%が「知らない」と答えている。全建総連では、こうした現状も踏まえ、制度そのものの見直しや延期を訴えている。
制度の周知とともに必要となるのが、元請け・下請けによる協議だ。前述の調査結果によると、上位企業から「課税事業者か、免税事業者か」のどちらを選ぶかを問われたことがある一人親方は11%にとどまり、約9割は「何も聞かれていない」と答えた。元下間の話し合いがなければ、対応の道筋も見えてこない。
国土交通省も、8月初めに発出した業界向けの通達でインボイス制度を取り上げた。来年10月からのインボイス発行のためには3月までに発行事業者となるための申請が必要だ。「手続きの期限が迫っている。まずは制度の内容を知ってほしい」(国交省建設市場整備課)と対応を促す。
国交省の通達では、制度開始後の元請けから下請けへの一方的な取引停止や取引額の減額などを想定し、「優越的地位を乱用した行為は建設業法違反の可能性がある」と注意も喚起した。元下間による協議や準備の遅れは、こうした事態にもつながりかねない。
担い手不足が課題となる中で、元請けにとっても協力会社との関係維持は重要だ。一方的に取引関係を切ったり、取引価格を引き下げる行為は、自らの首を絞めることにもなる。取引条件の見直しや、一人親方の社員化なども選択肢の一つになるだろう。他にもそれぞれの関係性の中で対応が考えられるはずだ。まずは手遅れにならないよう、早急に行動を起こしたい。
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