発注者はより踏み込んだ対策を
2022/9/5
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国の発注機関で構成する中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)が3月、入札の最低制限価格と低入札価格調査基準価格の算定モデルを3年ぶりに改正した。全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)の調査によると、7月時点で、この最新モデルか、これと同等あるいは同等以上の算定方法を導入している都道府県は85%の40団体、政令指定都市・県庁所在市は49%の25団体だった。
2024年4月に建設業にも迫っている時間外労働の罰則付き上限規制や、最近の急激な物価上昇に対応していく上でも、公共事業のダンピング受注を排除し、請負金額を適正な額に近付ける中央公契連のモデル改正に、全ての発注機関が速やかに準じることを求めたい。
3月に改正された最新の中央公契連モデルは、設計金額(予定価格)に基づく最低制限価格あるいは低入価格調査基準価格の算定で、「直接工事費×97%+共通仮設費×90%+現場管理費×90%+一般管理費×68%」の算定式を適用。さらに価格の下限を設計金額の75%、上限を92%とした。
今回の改正では、従来の19年モデルを見直し、一般管理費の算入率を55%から68%に引き上げた。ダンピング対策に加え、国の重要政策となっている従業員の賃上げを考慮し、事務職員の給与などが含まれる一般管理費の算入率を見直した格好だ。
ここで改めて工事の適正価格を考えてみたい。
公共工事品確法では、適正な予定価格の設定を発注者の責務としており、予定価格そのものが、発注者が考える適正価格ということになる。
しかし現状では、最低制限価格や低入札価格調査基準価格が応札の指標となる入札が、依然として多くの発注機関で行われ、適正価格であるはずの予定価格から1割程度値引きした受注が常態化している。最低制限価格で応札した入札参加者同士でくじ引きを行って落札者を決める、いびつなくじ引き入札≠熹ュ注機関によっては依然として少なくない。
予定価格による契約金額の上限拘束や、価格競争を基本とする入札・契約制度は、いまや国際的には少ないという。しかし、これを見直すには、会計法や地方自治法が壁となる。
現行制度の中で、契約金額を適正化するためには、最低制限価格などの引き上げは有効手段の一つになる。
これらの価格設定に当たって、中央公契連の最新モデルを上回る水準になるようにしている地方公共団体もある。全建の調査では、中央公契連モデルを上回る算入率の計算式への導入や、設定金額の上限の撤廃などを行っている発注機関が、都道府県で11団体、政令指定都市・県庁所在市で8団体あった。
地球温暖化によって風水害が激甚化し、震災も増えている中、地域において防災活動や災害復旧に携わる建設業の重要性はますます高まっている。建設業の経営の存続は行政の重要な課題であり、工事の品質を確保するとともに、建設業の経営を支える適正価格での受注に向けた、入札・契約制度改善への地方公共団体の英断を期待したい。
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