人への投資で巻き返しを 人材確保・育成
2022/11/21
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労働時間の短縮が求められる中で、現場の効率化、生産性向上が必須となっている。これまで現場作業を通じたOJTを人材教育の基本としてきた中小建設企業にとっては、人材育成の進め方そのものの見直しも迫られることになりそうだ。
時間外労働の上限規制の適用が1年余りに迫っている。人手に余裕のない中小建設企業にとっては、教育に時間を割くことが、ますます難しくなる可能性がある。
では、どうやって効率的、効果的に人への教育を行っていけばいいのか。あらためて建設教育訓練機関など、外部機関による教育や研修などの重みが増すことになりそうだ。
政府は人材教育の充実に向けて、新しい資本主義の中核テーマとして「人への投資」を掲げた。総合経済対策に「5年間で1兆円」という施策パッケージを盛り込み、労働者の職業能力を再教育する「リスキリング」など、人材教育に取り組む企業への支援を打ち出した。
労働者などのスキルを高め、それに見合った報酬がもらえる職場に労働力を誘導する。リスキリングに取り組む企業の生産性は向上し、賃上げにもつながっていく。人材教育が企業や産業にとって、人材獲得競争を勝ち抜くための武器となる。
これまで建設業界は、人の確保・育成に向けた給料や休暇といった処遇改善の取り組みで、他産業に後れを取ってしまった。この先も少子高齢化で労働生産人口は減少を続け、企業間や産業間での人材の取り合いは、さらに激しさを増していくだろう。
記録的な円安水準も追い打ちをかける。海外企業の日本法人から現地法人に転籍する日本人が出始めている。日本の優秀な人材が海外に出稼ぎに行く時代。人材獲得競争を優位に進めるためにも、これ以上のビハインドは許されない。
多くの企業でデジタル技術を活用した新たな事業戦略が求められている。従来のスキルを高めながら、ITに精通した人材の育成や能力開発も後押しするリスキリングの動きは、建設業以外の他産業でも拡大していくはずだ。
もちろんデジタル化は建設現場でも広がっている。建設企業も自らの生き残りをかける取り組みとして、人への投資という追い風を確実に捉える必要がある。
建設企業には、頻発・激甚化する気候変動への対応や、災害復旧を担う役割もある。国土強靱(きょうじん)化を着実に進め、地域の守り手としての責任と役割を果たしていくためにも建設人材の教育は不可欠だ。
近年は「研修制度が充実している会社」「自らが成長できる会社」を企業選びのポイントに挙げる学生が増えているという。若者は自身のキャリア形成につながる人材教育を就職先の企業に求めている。
教育体制の充実は建設企業や業界全体の魅力を向上させ、ひいては将来にわたる人材の確保・育成にも通じる。建設業は、今こそ一丸となり、教育などの充実に向けたギアを上げるべきだ。人への投資を拡大することが、建設業の未来を拓くことにもつながっていく。
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