人材確保へ、アクセル継続を
2022/12/5
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建設企業の賃上げが進んでいる。2022年の建設業の賃上げ幅は全産業の中でトップだった。建設業に関わる行政・業界・企業が取り組んできた努力の賜物(たまもの)だろう。今後は、コロナ禍からの経済再開で、他産業との人材獲得競争がさらに苛烈になることも見込まれる。積み上げてきた賃上げの流れを止めてはならない。
厚生労働省が行った賃金引き上げに関する調査によると、建設業の賃上げ幅は8101円(1人、月当たり)で全15産業中で最も大きかった。全体平均の5534円を5割近く上回っている。実は、建設業の賃上げ幅は21年もトップだった。さらに前年の20年も全産業で3番目に大きかった。ここ数年はこうした傾向が続いている。
背景にあるのは、建設産業界が続けてきた賃金アップへの取り組みだ。
技能労働者に支払われる賃金の目安となる公共工事設計労務単価は、最低となった12年の全国全職種平均1万3072円から、さまざまな政策的な誘導も受けて、10年連続でプラス。22年の2万1084円は12年比で57・4%増となっている。
岸田政権の「賃上げ優遇」の方針の下、国土交通省の直轄工事で、いわゆる「賃上げ加点」の総合評価も4月にスタートした。賃上げを実施する企業には、総合評価落札方式での加点が行われる。8月までの入札に参加した3308社のうち2079社が賃上げを表明したという。
賃上げ加点の評価対象となるのは、大企業で3%以上、中小企業等で1・5%以上の賃上げの表明だ。定期昇給だけでは届かず、社員全体の給与水準そのものを引き上げるベースアップに取り組む企業も多い。前述の調査でも、22年にベアを行った企業の産業別割合で建設業は最上位にある。
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少の中で、人材不足は建設業にとって積年の課題となってきた。社会保険未加入対策、長時間労働の是正、多様な働き方の促進、建設現場のデジタル化、そして技術者や職人の賃金アップなど。進めてきたこれらの施策のベクトルは、すべて人材不足の解消に向かっている。
中でも、賃金の多寡は、人材の獲得や定着に最も大きな影響を及ぼす要素の一つである。実際に、新卒で建設業を選ぶ就職者数は、建設業の給与水準のアップと比例して増えている。ここ数年は、建設業への入職者数(転職も含む)が離職者数を上回っているという統計結果もある。
では、こうした好循環はこれからも続いていくのか。
約3年に及ぶコロナ禍を経て、いよいよ経済活動が本格的に再開しつつある。社会環境の変化に伴い、一人一人の働き方も大きく変革した。人材不足は、なにも建設業に限った課題ではない。経済全体が熱気を帯びるとともに、他産業の人材獲得への動きもさらに高まっていくだろう。
建設業の取り組みは、着実に成果を出しつつあるとはいえ、依然として道半ばである。他産業との人材獲得競争を乗り越えていくためにも、賃金アップへの努力を続け、魅力ある産業とならなければならない。賃上げへのアクセルを踏み続けることが必要だ。
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