他産業との共創で「新しい景色」を
2022/12/15
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中東・カタールで開催されたサッカーワールドカップ。激闘を終えて帰国した日本代表の会見では、「サッカーに目を向ける人を増やす」「盛り上がった火を消さない」などと語られた。人気スポーツといえども、多くの国民にその魅力を理解してもらうこと、さらに他のスポーツとの若い人材の取り合いは大きな課題というのが現実だ。試合での戦いぶりとともに、帰国した選手たちがメディアに露出し、サッカー界をアピールする姿は印象に残った。
こと建設業界でも人材確保という大きな課題を抱え、他産業との競争の真っただ中にある。魅力ある産業としてのアピールはテレビCMに見られ、小中学生らに対する出前講座、現場見学会なども積極的に進めている。大手から中小まで、全国から地域まで、それぞれの立場で人材確保のためのアピール、建設業界のイメージアップ戦略は今後も継続して進めるべきだ。
とはいえ、多くの産業界にとっても人手不足は深刻である。業界周辺から聞いたのは、コロナ禍で飲食などサービス産業から建設業界に流れた人材が、再び活気を取り戻そうとするサービス産業に戻っていったという声。一方で、外国人の入国制限が10月に大幅に緩和され、再び来日する外国人労働者に期待していたものの、折からの円安の影響で“旨味”がなくなり、日本の建設業界に戻ってこないという話も聞いた。これら人材を当て込んで組んでいた工程に、狂いが生じる、という少なからぬ心配がにじみ出ている。
人材を呼び込む策は続けるべきだが、限界はある。総人口は2008年がピークとされ、既に人口減少社会に突入している。建設業は他産業と同じフィールドに立って勝負できるのか。地域の建設業が真っ向勝負を挑んで勝ち目はあるだろうか。
「もう人は入ってこない」と思い切って割り切るくらいの考えも必要かもしれない。人が入ってこない前提に立てば、生産性を上げた効率的な業務に取り組まざるを得なくなる。施工品質を意地でも確保するための電子化、機械化、ロボット化、DX化などに早急に取り組むことが求められる。一方で、これらの取り組みに、本腰を入れている地域の建設業はまだまだ少ない。人材の確保という点でも、建設分野ばかりを追うのではなく、通信や情報、機械などの分野にも目を向けてみることで、異分野の優れた専門家が違った視点で業界の課題をあっさり解決してくれる可能性もある。
他産業との「競争」ばかりでは次第に体力が奪われてしまいかねない。同じ体力を使うのであれば、他産業と「共創」する形も模索していかないといけないだろう。例えば横浜市では、市内の建設企業やその他の民間企業が参加する「横浜PPPプラットフォーム(Yopp)」を立ち上げた。市の後押しを受けながら多様な主体が交流することでビジネスチャンスを生み出し、横浜の未来の新たな価値を「共に創る」取り組みがスタートした。
現状維持ではなく、周囲があっと驚くような連携が生まれ、建設業界にとっての「新しい景色」が見られることを期待する。
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