建滴 時間外労働の上限規制 建設業への適用まで半年
2023/9/19
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建設業における時間外労働の上限規制適用が、いよいよ半年後に迫ってきた。労働基準法の改正により、時間外労働規制を見直すもので、違反した場合は使用者に6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。すでに大手企業は2019年4月、中小企業は20年4月に適用されているが、建設業など一部の業種は24年3月まで猶予されてきた。公共・民間工事にかかわらず、受発注者一体となって、この罰則付き時間外労働規制に対する取り組みを強化しなければならない。何より、長時間労働は、工事に従事する技能者に深刻な健康被害をもたらす恐れがあり、心身の疲労は重大事故につながりかねない。建設業を将来にわたり持続可能な産業とするために、働き方改革は待ったなしと言える。
しかし、全産業と比べて建設業の働き方の見直しは道半ばと言わざるを得ない。厚生労働省「毎月勤労統計調査」年度報を基に国土交通省が作成した資料によると、建設業の年間出勤日数は全産業のそれと比較して12日多い。また、年間の総実労働時間は同様に68時間長い(22年度実績値)。
さらに、建設業における休日の取得状況を見ると、技術者の42・2%、技能者の38・5%が平均的な休日取得日数として「4週6休程度」と答えている(国交省「適正な工期設定による働き方改革の推進に関する調査」、23年5月31日公表)。技術者、技能者ともに4週8休(週休2日)の確保ができていない場合が多い。
罰則付き時間外労働規制について、国はこれまでに、国交省直轄工事における週休2日モデル工事の拡大など、さまざまな働き掛けを行ってきた。ただ、建設業団体などの率直な意見を聞くと、こうした取り組みに関する議論が十分に尽くされたとは言えないようだ。時間外労働の要因の一つとされる、事業所と現場の往復移動時間や、交代制導入に伴う人員の確保といった課題に根本的な解決策が見いだせず、苦慮する建設企業は少なくない。
民間工事では、発注者側の理解がまだまだ進んでいないとされる。前述の調査によると、公共工事の受注がメインの技術者・技能者の3割弱が「4週8休(週休2日)以上」を確保しているのに対し、民間工事の受注がほとんどという技術者・技能者で週休2日以上を確保できている割合は1割に満たない。残り半年となったいま、国は民間発注工事における取引の適正化について、地域経済団体などと幅広く連携し、これまで以上に周知と対策に取り組んでもらいたい。
働き方改革は、「働きがい改革」でもある。週休2日の確保はもちろんだが、併せて、技能者に賃金が適切に行き渡る仕組みづくりを進め、技能者が将来に明るい希望を抱けるような業界にする、その歩みを緩めてはならない。
折しも、全国中小建設業協会(全中建)と国交省とのブロック別意見交換会が9月21日から全国6ブロックで開かれる。全中建傘下の14団体も参加し、働き方改革をテーマに話し合う。週休2日の確保をはじめ、技能者の処遇改善、若手の入職促進、入職者の定着などについて意見を交わし、実り多き会となることを期待したい。
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