建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

建設経済の最新分析B時間外労働規制 下請けに施工管理移行の可能性

いいね ツイート
0

 建設労働に関する制度改正が建設業にもたらす変化について、請負階層別(元請け、1次下請け、2次以下下請け)、施工上の役割別(施工管理、現場作業)に、ゼネコンの協力会社約4800社(有効回答は1700件)を対象としてアンケート調査を行い、さらにヒアリング調査を実施した。
 本稿では、2024年度より建設業にも適用となる「時間外労働の罰則付き上限規制」が建設業界にもたらす変化の一部について示す。
 アンケート調査によると、下請けでも約4割の企業が施工管理を担っていることが分かった。また、業界内では労働時間上限規制の適用が広く認知されている一方、労働時間上限を超える従業員を抱える企業が約6割に上ることが分かった。どの請負階層でも、施工管理を担う企業の従業員が、担わない企業の従業員より多くの時間外労働を行っていた。
 時間外労働が生じる理由には、下請けも元請けも同様の傾向がみられ、人員不足の比率が特に目立った(グラフ参照)。時間外労働の削減に取り組んでいない企業は、請負次数が下がるほど対応できる人材がいないことを理由とする比率が高く、2次以下の下請けで特に顕著だった。
 ヒアリング調査によると、下請け自らが下請け間の作業連絡調整を行っているとの指摘の他、元請け職員の施工管理能力の低下を危惧する声があった。実際に元請けから施工管理業務の移行を求められた下請けも存在した。人手不足の状況下では、元請けは労働時間上限規制の適用に対応するために、今後とも下請けへ施工管理業務の移行を求める可能性が高いと考えられる。
 特にゼネコンが構成する元下構造では、1次下請けが施工管理業務の一部を担うことが主流となる可能性もある。元下間の役割分担が変化している現状を踏まえつつ、現場管理を適正にできる元下構造を考えていく必要があろう。
(建設経済研究所 研究員  櫻井将司)