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建設経済の最新分析E脱炭素化に向けた取り組み 高まる非財務情報の重要性

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 今年4月の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合において、GX(グリーントランスフォーメーション)推進に向けて全ての部門の行動が必要であり、サプライチェーン全体の変革とこれに向けた情報開示などの企業の取り組みの重要性が共有された。建設産業も脱炭素化に向けた変革が求められている。具体的には、温室効果ガス(GHG)排出量の削減であり、そのためには「サプライチェーン全体におけるGHG排出量の把握(算出)からGX公開」と「排出量削減対策の実施」が必要である。
 GHG排出量は、サプライチェーン全体で把握することが主流となっている。サプライチェーン全体の排出量は、自社のオフィスや工場などで直接排出する「Scope1」、他社から供給される電気等のエネルギー使用に伴う間接排出の「Scope2」、原材料の調達や製品の利用等で排出される「Scope3」の合計から成る。
 近年、発注者や元請け企業がScope3の排出状況をサプライヤーに確認するケースが増えている。排出量を算出するためには、自社システムや汎用(はんよう)システムの活用や連携が必要であり、今からでも算出のためのノウハウを蓄積していくべきである。
 さらに、企業情報開示の一環として、非財務情報のひとつとして自社のGHG排出量削減状況や計画を開示することは、ステークホルダーにとって関心の高い内容となるだろう。実際に各社が開示しているデータを基に、当研究所が建設産業(建設業および不動産業)28社を対象としてCO2排出量(Scope1とScope2の合計値)を分析したところ、2019年から21年にかけて総量で減少しており、建設産業は削減に貢献していると言える=イメージ参照。
 これは、建設産業各社が真摯(しんし)に削減対策に取り組んでいるためであり、具体的には、「環境に配慮した燃料」「環境に配慮したコンクリート」「木材利用(木造、木質化)」といった原材料などの見直しが代表の取り組みである。各社の施工現場での導入拡大や技術開発の推進が期待される。
 GX推進に向けて全ての部門の行動が必要とされる中、インフラの整備を担う建設産業の役割と向けられる期待は大きく、GHG排出量の実態把握から情報開示までをセットで実施していくこと、そして削減対策の積極的な活用と技術開発が今後重要になるだろう。(建設経済研究所 研究員 小畠 星司)