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足りないものは充電インフラ、日本のEV充電インフラの現状と課題 【第1回】EV充電インフラの現状と政策動向まとめ

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 東京都の新築建築物は電気自動車(EV)充電器の設置を義務化した。全国で初めて都がEV充電の設置義務付けをすることを正式発表したのがおよそ1年前の2022年12月だ。
 環境確保条例の改正により、一定の基準に該当する新築建築物は25年4月からEV充電器の設置が必須となり、EV充電器の設置に向けてデベロッパーやゼネコンも積極的に動き出したと推測する。
 本連載では、早い段階からEV充電整備に向けて動いた企業、設置後の運用段階での悩みなど、現場のことまでリアルな内容を伝えたい。第1回目は、日本の住宅におけるEV充電の現状と課題に焦点を当てる。
 EV充電器には大きく分けて「公共充電」と「基礎充電」があるが、住宅などに設置され利用者が限定されるのは「基礎充電」だ。基礎充電は、現在3〜6`hの充電器が主流で、車種にもよるが3`hの充電器であれば1時間で10〜15`を走る分を充電することができる。車通勤をする場合でも、日本の平均通勤距離は片道10・5`のため、就寝中に充電をしていればEVでも安心して移動できる。基礎充電が充実すれば、EVの普及が進むことは自明だ。
 20年の国勢調査によると、共同住宅に住む世帯の割合は44・6%、東京都では70・3%も占めており、年々増加傾向にある。一方、EV購入者の9割が一戸建て、1割が共同住宅に住む世帯という経済産業省の調査もあり、共同住宅の居住者がEVを購入したくても購入しづらい状況があることが分かる。
 例えば既設の共同住宅では、充電器の設置を想定して駐車場が設計されていないため、工事費用が高額(約50〜150万円)になる。工事費を負担するにも分譲では管理組合の合意形成が難航する、EV保有者はまだ少なくオーナーが費用をかけて設置することに前向きにならないといった課題は多い。
 ただし、新築する共同住宅にEV充電器を設置する場合、設置を前提に設計できるため既設と比べ工事がスムーズになる。また、EV保有者はEV充電設備を前提に住宅を選ぶため住宅価値が向上するなど、デベロッパーもゼネコンも両者ともにメリットが享受できるのだ。

執筆者プロフィール

Terra Motors且謦役会長 徳重 徹(とくしげ・とおる)

徳重 徹(とくしげ・とおる)
Terra Motors且謦役会長
1970年生まれ山口県出身、九州大学工学部卒。住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画に従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得し、シリコンバレーにてコア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。2010年にEV事業を展開するテラモーターズを創業、インドの電動三輪市場においてトップシェアを獲得。22年に日本でEV充電インフラTerraCharge事業を立ち上げ。EVをもっと身近にすることを目指して、新たなインフラづくりに取り組み、世界で勝てる事業の創出へ挑んでいる。