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官民連携で進むインフラ維持管理 国土交通省

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 2023年11月、国土交通省による新たなインフラメンテナンス施策となる「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」で、先進的な事業に取り組むモデル地域として、11者(地方自治体40団体)が選ばれた。群マネは、複数の市町村にまたがる一定区域内のインフラストックを「群」と捉え一体的にマネジメントするもの。それによりインフラメンテナンスに充てる地方自治体の予算や職員の減少を補う取り組みだが、選定の過程で明らかになったのが40団体中8団体で技術系職員が1人もいなかったこと。地域が直面するインフラメンテナンスの課題の一端が現れた格好だ。
 国交省の調査によると、今後20年で地域のインフラ群は老朽化が加速度的に進む。建設後50年以上経過したインフラ施設の割合を、20年度と40年度で比較すると、道路橋が30%から75%へ「2・5倍」、トンネルで22%から53%へ「2・4倍」、下水管渠では5%から35%へ「7倍」と大きく膨らむとされる。
 こうした国内にあるインフラストックの多くは、地方自治体が管理している。一方で、地方自治体では、技術系職員の不足が深刻化。現時点で、技術系職員数が「6人以上」の市区町村は全体の52%にとどまっている。残る48%は「0〜5人」となっており、その約半数(25%)の団体では、技術系職員が存在しない。
 こうした状況を危惧した国交省は、群マネを普及するための検討体制として、「地域インフラ群再生戦略マネジメント計画策定手法検討会」(座長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)と「地域インフラ群再生戦略マネジメント実施手法検討会」(座長・小澤一雅東京大学大学院工学系研究科特任教授)を設置。まずはモデル地域を選定し、課題や知見を集めた上で、小規模な市町村を念頭に群マネの導入を後押しすることとした。
 モデル地域は、一つの市区町村がリードする形で、複数の市区町村が連携する「水平連携」、都道府県がリードし、管内の市区町村と連携する「垂直連携」、団体が単独で他分野のメンテナンスをまとめて実施する「単独」の3タイプで取り組みを進める。
 今後、各モデル地域では1〜2年をかけ、群マネで取り組む内容を盛り込んだ計画と手引きをまとめる。その上で、適切な支援体制の確保や取り組みの状況、広域連携の実現性が高い案件を重視するといった観点から、計画を具体化していくことになる。
 地方自治体の技術系職員を中心としたインフラメンテのマンパワー不足を補う一つのモデルの実現へ、国主導の下、群マネという新たな挑戦が始まろうとしている。
(編集・デジタル局編集部)