建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

官民連携で進むインフラ維持管理 府中市

いいね ツイート
0

 府中市は東京都のほぼ中央に位置し、面積29・4平方`の市域におよそ26万人が暮らす。甲州街道の宿場町として古くから栄え、大企業の生産拠点なども立地。とりわけ中央部にある「けやき並木通り」は市のシンボルだ。全国初の「道路等包括管理」はその周辺で2014年度に始まった。
 市では高度経済成長期に道路をはじめ多くの都市基盤施設を整備。市民生活の根幹を担うインフラとして管理してきた。
 ただ、老朽化の同時進行を背景に管理費が膨大になることから、今まで通り管理し続けるのが難しいと判断。国土交通省の補助(先導的官民連携支援事業、11年度)を得るとともに、道路などの管理費が年間5・76億円不足するとの試算(インフラマネジメント白書、12年10月)を市民に示すなどして対策を練った。
 その中で具体化させたのが道路等包括管理。直営と作業ごとの委託で対応してきた道路管理に▽複数年契約▽包括発注▽性能発注―を取り入れ、民間活力を生かしてコストの削減と市民サービスの向上を図る手法だ。
 市内全域への展開を視野に入れつつ、まずは、けやき並木通りなどの市道19路線(けやき並木通り周辺地区)に絞って試行。市内業者を交えた異業種JVの編成などを条件に事業者を公募・選定し、14〜16年度の3年間で事業を実施した。
 事業者に任せた業務は▽巡回▽維持(清掃、植栽管理、街路灯管理)▽補修・修繕▽事故対応▽災害対応▽苦情・要望対応―など。その結果、従来手法に比べコストをおよそ7・4%削減できただけでなく、苦情・要望の件数も実施前より約42%減少した。複数年契約による人員の確保やJV構成メンバーの技術力向上など事業者側の効果も確認したそうだ。
 これに続き、18〜20年度は北西地区の633路線へと範囲を広げ、21〜23年度には南西地区と東地区を加えた3地区で市内全域の2454路線をカバー。市内全域での実施に合わせて単価契約による補修・更新業務や樹木剪定(せんてい)等業務も事業に含めた。複数の自治体と民間事業者が連携するための事業モデルなども検討している。
 24年度からも3地区で市内全域をカバーする事業を継続。期間を28年度までの5年間に延長するなどして課題や効果を検証し、29年度以降の対応を考える。
 インフラの管理に新たな手法を導入し、成果を上げながら取り組みを推し進める府中市には、他の自治体からの問い合わせが絶えないという。