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官民連携で進むインフラ維持管理 川崎市

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 2023年12月、ビルメンテナンス事業を営む和光産業(川崎市川崎区)のホームページに入札情報サイトが立ち上がった。サイトには市立小中学校の維持管理業務や修繕業務の入札公告が並ぶ。民間企業である同社が公共事業の発注業務に携わるのは、川崎市の「麻生区内学校施設包括管理業務」を受託したからだ。
 業務は麻生区内にある全ての市立小中学校24校を対象とする。受注者は設備の不具合への対応や施設巡回、各種保守点検といった業務の他、250万円以下の軽易工事の発注も担う。市の教育委員会では初の試みとなる。
 工事や業務の契約に当たっては川崎市の入札や見積もり合わせの手法に準じた手続きが必要となる。過去の実績から、維持管理業務は年間300〜350件程度、修繕業務は年間100〜150件程度の発注を見込む。業務委託費の支払いは3年で約7億5000万円の受託金額から支払うため、予算も受託者が管理しなければならない。
 和光産業を含む3社のグループは、委託契約を締結した23年11月から各校の巡回を実施し、教職員へのヒアリングを行ってきた。営業企画本部長兼PPP事業部長の矢口健人氏は「4月1日から修繕業務などを開始できるよう動いている。今のところは順調だ」と語り、続々と契約手続きを進めている。
 市が軽易工事の発注を含む包括管理業務を始めたのは、スピード感に期待したからだ。川崎市教育委員会教育環境整備推進室計画推進担当課長の森真二氏は「民間のノウハウがあれば、さまざまな不具合がある中でどの修繕を優先するかを素早く決定できる」と話す。市は受注者の報告書や月1回の連絡調整会議を基にモニタリングを行う。
 教職員にとってのメリットもある。市が17年度に行った勤務実態調査によると、終業後に3時間以上の残業をしている教職員は小学校で35%、中学校で42%と長時間勤務の傾向が強い。維持管理に関する意思決定がスムーズに進めば、教職員の負担も軽くなるだろう。
 市は、将来的に麻生区以外の全ての区でも学校包括管理を実施する方針だ。和光産業の矢口氏は「当社でも公共事業の発注まで含む業務は初めて。先進的な試みであり、受託できて光栄だ」と話すとともに「私立学校や病院などの管理実績を基に着実に業務を進め、地元の川崎市の取り組みを日本全体に広げていく一助としたい」と力を込める。
(神奈川支社)