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官民連携で進むインフラ維持管理 静岡県、下田市

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 静岡県と下田市が昨年10月に試行を始めた「下田市全域の県管理道路と市道の包括管理業務」。管理者が異なる道路を一括で管理委託する、全国的に見ても極めて珍しい試みだ。
 伊豆半島の南部、下田市や河津町など6市町で構成する「賀茂地区」は、人口減少が著しい地域。2022年度当初時点での静岡県内の自治体職員数を見ても、賀茂地区の5町の職員数は下位5位までを占める。下田市も県内の全市の中で、最も職員数が少ない。職員数の減少は、インフラの維持管理水準の低下に直結する重大な課題だ。
 この対策の一つとして打ち出したのが県管理道路と市道の包括管理である。
 県が管理する延長47`と下田市が管理する236`、計283`の道路の小規模修繕、舗装補修、道路照明の維持修繕、雪氷対策を包括委託する。委託先の選定に当たっては、工種の異なる地元企業がJVを組んで参加できる「地域維持型JV」を適用した。
 包括委託により、従来の管理事業で必要だった各施工者への指示と報告を一本化。情報共有アプリを採用し、指示の効率化・迅速化を図っている。契約方法は、従来の単価契約ではなく、施工者が要求水準に応じて施工内容を決める総価契約とした。包括委託した業務は1件あたり50万円を上限としている。これを超える場合は包括委託業務の範囲外とし、県や市が別途で工事発注するため、受注者がリスクを抱えたり、管理水準が低下したりすることはないという。
 道路包括委託の試行期間は23年10月〜24年10月の1年間。この1年間の結果を基に、受発注者双方の省力化の状況などを検証する。県は今後、賀茂地区の全6市町まで道路包括委託の対象範囲を拡大する考え。業務範囲も広げる想定で、発注者が担っている修繕箇所の選定や住民対応など全体的なマネジメントも、受託者に委託することを検討している。委託期間を複数年度にすることも視野に入れる。
 深刻な技術職員の不足への対応は包括管理業務にとどまらない。県は、道路の路面点検に車両に搭載したMMS(モービル・マッピング・システム)を活用したり、異常箇所をAIで抽出したりする現場実証を同じ下田市内で始める。包括委託の受注者とも連携し、技術職員不足をデジタル技術によって補うことで効率的なインフラの管理手法を確立していく考えだ。
(静岡支社)